研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00789
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
飯野 亮太 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (70403003)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子モーター / 1分子計測 / タンパク質工学 |
研究実績の概要 |
1分子蛍光イメージングを用い、カビTrichoderma reesei由来のエキソ型セルラーゼTrCel6Aおよび細菌Cellulomonas fimi由来CfCel6Bがリニア分子モーターであることを実証することに成功した。さらに、すべてのドメインを含む全長分子、糖質結合モジュール(CBM) のみ、CBM+リンカー、触媒ドメイン(CD) のみといった組合せについて、結晶性多糖分解反応の素過程(結合、運動、解離)の速度定数の定量計測を行い、それぞれのドメインの反応素過程における役割を解明した。 また、タンパク質デザインアルゴリズムのロゼッタを用い、エキソ型キチナーゼである霊菌Serratia marcescens由来SmChiAとSmChiBを融合したハイブリッドサイボーグ分子SmChiABの創生を試みた。しかしながら、計算機デザインで高いスコアを示した分子はほとんどの場合、発現させた大腸菌内でフォールディングせずに凝集体を形成し、機能解析に十分な量の可溶性分子を得ることが困難であった。この結果は、1.野生型タンパク質はde novoデザインされた理想タンパク質に比べ安定性が著しく低い、2.フォールディングしたタンパク質分子の熱力学的な安定性ではなく、フォールディングのしやすさが天然タンパク質を再デザインするうえで重要であることを示している。 上記の問題を克服するため、計算機を用いた合理的デザインに加え、1本の反応チューブ内で簡便に網羅的な変異体の作製が可能となる手法を新規に開発した。GFPの蛍光回復変異体をコントロールサンプルとして本手法を適用し、DNAディープシークエンシングによって網羅的な変異導入が可能であることを確認した。さらに、本手法を適用し、SmChiABの可溶性と収量を向上させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1分子蛍光イメージングを用い、カビTrichoderma reesei由来のエキソ型セルラーゼTrCel6Aおよび細菌Cellulomonas fimi由来CfCel6Bがリニア分子モーターであることを実証することに成功し、各ドメインの役割を解明することに成功した。さらに、計算機合理デザインと網羅的変異導入を組み合わせ、霊菌Serratia marcescens 由来SmChiAとSmChiBを融合したハイブリッドサイボーグ分子ChiABの可溶性と収量を向上させることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1.サイボーグ分子の創生:計算機合理デザインと網羅的変異導入を組み合わせSmChiABの可溶性と収量のさらなる改善を行う。また、エキソ型のCBM、リンカー、CD を入れ替えたサイボーグ分子、CBM とCD をdsDNA で繋いだサイボーグ、エキソ型とエンド型をリンカーやdsDNA で繋いだサイボーグを創生する。高い活性を持つサイボーグを活性測定で選択する。 2.1分子蛍光観察によるサイボーグ分子の反応速度定数の定量計測:創生したサイボーグ分子の反応素過程の速度定数の1分子計測を行って野生型と比較し、活性変化の機構を明らかにする。 3.高速1分子計測による野生型、サイボーグ分子の運動素過程の解析:金ナノ粒子をプローブに用いた高速1分子計測で、運動素過程(化学反応待ちのポーズの長さ、推進力発生時のステップの大きさや速度)の解析を行う。野生型とサイボーグで計測を行い比較する。 4.野生型、サイボーグ分子全長の構造解析:CfCel6B、TrCel6A の全長の結晶化条件の検討と構造解析を行う。サイボーグ分子も同様に行い、性能の違いを生み出す構造基盤を明らかにする。
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