研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00790
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
奥村 久士 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 計算科学研究センター, 准教授 (80360337)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アミロイド線維 / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
アミロイド線維はタンパク質が間違って折りたたみ、凝集することによってできた不溶性の線維である。アミロイド線維は40種類以上の病気の原因となっている。例えば、アルツハイマー病はアミロイドβ(Aβ)ペプチドが凝集してできたアミロイド線維が原因ではないかと言われている。アミロイド線維の伸長は末端にAβ1分子が順次結合してβシート構造に変化することで起きるため、末端構造を明らかにすることはアミロイド線維形成を理解する上で重要である。しかし、アミロイド線維の末端領域は1~2分子しかないため、実験では観察困難である。そこで分子動力学シミュレーションによりアミロイド線維末端の構造を調べた。20本のAβペプチドからなるアミロイド線維、57876個の水分子、20個のナトリウムイオンをシミュレーションボックスに用意した。タンパク質の力場にはAMBER parm99SBを、水にはTIP3Pを用いた。静電相互作用の計算はパーティクルメッシュエワルド法で行った。水分子は剛体として扱い、温度は能勢・フーバー熱浴、圧力はアンダーセンの方法を使って制御した。9つの異なる初期条件から200nsのシミュレーションを行った。プログラムは代表者が独自に開発してきたGEMB(Generalized-Ensemble Molecular Biophysics)プログラムを用いた。その結果、一方の端では2本のβシートが離れているのに対し、もう一方では閉じたままになっていることを実験に先駆けて発見した。またその現象は2枚のβシートβ1とβ2の水素結合の強さの違いとAβアミロイド線維の形状に起因していることも解明した。この発見はアミロイド線維の伸長機構を理解するのに役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はアミロイド線維の両末端の構造がことなることを実験に先駆けてシミュレーションで発見した。これはアミロイド形成の本質に迫る発見であるので、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、100 本のモノマー状態のペプチドから核生成過程、伸長過程を経てアミロイド線維が形成された平衡状態に至る動的秩序形成過程の全貌を解明する全原子分子動力学シミュレーションを行っている。今後その解析を行う。
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