研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
16H00795
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 京剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70183605)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超伝導 / 磁束量子 / 界面摩擦 / 交流伝導度 / ストリップ線共振器 / 駆動電流 / Q値 / 共振周波数 |
研究実績の概要 |
(1)超伝導体磁束量子格子の交流伝導度,それを駆動したときの交流伝導度が測定できるように,駆動電流導入端子付きストリップ線共振器の設計を行い,電磁界解析シュミレーターで解析を行いながら,特性が最適化されるように形状・寸法を決めた。(2)超伝導体であるニオブを材料として選択し,(1)で設計した共振器を実際に作製した。ニオブ薄膜は蒸着により作製し,パターンニングはウェットエッチングの方法で行った。(3)作製した共振器の特性をネットワークアナライザーで測定し,共振周波数8GHz,Q値3000(超伝導状態)を確認した。(4)磁場を印加せずに,共振器に直流電流を流し,共振特性の変化を測定した。共振周波数の変化が駆動電流の2乗に比例する様子が観測された。この振る舞い自体は過去にも観測されているもので,秩序パラメーターが電流印加による対破壊により小さくなるという考え方で,定量的にもよく理解できる。(5)磁場を印加して,共振特性が電流によりどのように変化するかを調べた。反磁場の効果を考慮すると,丁度下部臨界磁場以上で磁束量子が試料内に侵入することによる共振特性の大きな変化をとらえることができた。今年の成果はここまでで,次年度は,この磁束が侵入した状態の共振特性の変化を詳細に調べ,また高次モードの利用,もしくは別のサイズ・形状の共振器も作製する等して,周波数依存性の測定もできるようにし,磁束量子の交流伝導度,あるは,その駆動電流による変化などを議論する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで全く行ったことのなかった,超伝導体試料のマイクロ波共振特性の駆動電流による変化をとらえられる装置を設計・作製し,実際に共振特性の電流依存性をいくつかの磁場に対して測定することができるようになったが,磁場や周波数,駆動電流の関数として詳細に測定することはまだできていない。当初計画だと,ここまで一通りの測定を行うことが初年度のタスクであったので,進捗状況は,当初計画よりやや遅れている。理由は,初動段階で駆動電流導入端子を装着したストリップ線共振器のQ値が思うように上がらなかったからである。(現在は解決済み)
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるので,今年引いたレールに従って,共振特性の詳細な磁場・電流・温度依存性を測定し,さらにはディスオーダーの量を変化させた試料も用意し,同様の測定を行い,当初目的を(少なくとも実験データを取るところまでは)達成したい。
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