研究実績の概要 |
自律的に動く粒子群をアクティブマターとよび、粒子間の配向相互作用に由来する集団運動が生じる特徴を持つ。代表的なアクティブマターであるバクテリアにおいて、幾何的制約下では渦同士の回転軸が平行の強磁性体的な渦(Ferro-magnetic vortices, FMV)と反平行の反強磁性体的な渦(Anti-ferromagnetic vortices, AFMV) の二つの集団的回転モードが出現する。本研究ではバクテリア大腸菌(E. coli)の直進性変異体RP4979を用い、微細加工したPolydimethyl siloxaneチャンバーにバクテリア懸濁液を高密度に封入する手法を確立した。半径Rの2つの円が中心間距離をΔだけ隔てた形状のピーナッツ型境界において、2つの渦を一定の相互作用距離で拘束するようにバクテリアを封入すると、2つの渦が対をなした「渦ペア」が出現した。渦ペアには、同じ向きの強磁性ペアFMVと反対向きの反強磁性ペアAFMVがあり、その転移は幾何パラメータの比Δ/R=1.4を境にして起こることがわかった。バクテリア極性的な配向相互作用をする自己駆動粒子とみなし、さらに境界とNematic相互作用をすると考えたVicsekモデルを平均場近似の下で解くと、Δ/R=1.4で2つのパターンが等確率で出現し、その前後でパターンが変化することがわかった。バクテリア集団運動には一定のサイズをもつ渦としての性質が潜んでおり、渦同士の相互作用に関する幾何法則が巨視的なパターンを支配することを明らかにした。さらに、3つの渦が相互作用するフラストレーションがある系においてFMVおよびAFMVの転移点を詳細に解析した。3つの渦では転移点がΔ/R=1.4ではなくΔ/R=1.7の近傍にシフトすることを実験から突き止め、集団運動を相互作用する渦として捉える幾何学的性質を明らかにした。
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