公募研究
細胞質流動は細胞内で細胞質全体が流れるように移動する集団的な現象である。本研究課題では、流動場が自発的に形成される3つのタイプ(Circulation型、Saltation型、Rotation型)の細胞質流動を統一的に「ゆらぎと構造の協奏」のコンセプトから説明するモデルを構築する。そして、その妥当性を実験的に検証することを目的とする。今年度は「減数分裂時細胞質流動(MeiCS)」に着目して研究をすすめた。MeiCSの流動方向はあらかじめ決まっていないばかりか、流動の途中で時折逆転することが知られている。このことから、流動の原動力を提供する微小管細胞骨格がある方向に自発的にそろい、また、そろった方向が時間とともに変化することが予想された。我々は、微小管の方向性がそろうために細胞内の小胞体(ER)の網目状構造が必須な役割を果たしていることを明らかにした。網目状構造を実験的に阻害すると流動方向や微小管の方向がそろうことはなかった。このことから、微小管上を小胞体が動くことによって、周囲の微小管を同じ方向に揃えるポジティブフィードバック機構によって流動方向がそろうとするモデルを提唱した。一方で、そろった方向が時間に変化するしくみには「ゆらぎ」が積極的な役割を果たしていることを示した。まず、理論モデルを用いて、微小管が確率的に生成と消滅を繰り返す「ゆらぎ」によって、流動の方向が変化し得ることを示した。さらに、ゆらぎの度合いを抑える実験を行うことにより、理論モデルで予想された通り、流動の方向の変化を抑えることに成功した。さらに、このようにして生じた流動が受精後の胚の機能に寄与することも明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度、本課題の成果を論文発表することができた。査読過程で多くの課題を克服することを要求されたが、その全てについて解決し、受理につなげた。成果はプレスリリースを行なった。
実験的及び理論的にモデルのパラメータを変化させ、実験結果とモデルの挙動を比較し、必要ならばモデルの改良を行う。これまでに構築したモデルではSaltation型とCirculation型の違いは定性的には説明できているものの、定量的な説明には至っていない。今年度は領域内共同研究を進め、この問題にも取り組む。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (3件)
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https://www.nig.ac.jp/nig/ja/2017/03/research-highlights_ja/20170314.html
https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20170314.pdf
https://www.nig.ac.jp/nig/ja/research/organization-top/laboratories/kimura