研究領域 | 理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学 |
研究課題/領域番号 |
16H00818
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
相良 剛光 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (60767292)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超分子化学 / シクロファン / 機械的刺激応答性発光材料 |
研究実績の概要 |
近年、機械的刺激に応答して発光色が変化する材料が世界中で報告されている。本研究では、魅力的な三次元構造とホスト化合物としての有用性から、有機合成化学、超分子化学の分野で研究されてきたシクロファンに着目し、適切な分子骨格修飾を施す(柔らかさを導入する)ことにより、多様な機械的刺激応答性発光材料を開発することを目指している。 平成28年度は、以下の三項目について研究を推進した。 1.すでに報告済みの機械的刺激に応答して発光色が変化するシクロファンの各種有機溶媒に対する難溶性を解決するため、二つの発光部位間のリンカー鎖長をテトラエチレングリコールからヘキサエチレングリコールに変更したシクロファンを設計・合成した。得られたシクロファンの各種有機溶媒に対する溶解性は大きく向上した。また、このシクロファンは先行研究のシクロファンと大きく異なる熱・機械的刺激応答性を示し、導入するリンカー鎖長が物性に大きな影響を及ぼすことを見出した。 2.二つの発光部位の一つをナフタレン骨格に変更したヘテロ型シクロファンの合成も行い、こちらの化合物が広い温度範囲でネマチック液晶相を示し、急冷することで過冷却ネマチック相を示すことを見出した。この過冷却相に対して熱処理を施すと結晶相に相転移し、この相転移に伴って発光色が変化することも確認できた。さらにこの結晶相は機械的刺激に応答して発光色が変化することも見出している。 3.より柔らかなシクロファン群の創製に向けて、シクロファンに置換基を導入する合成手法を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の機械的刺激に応答して発光色が変化するシクロファンの最大の問題点であった難溶性の課題が解決され、リンカー鎖長が大きく刺激応答性発光特性に影響を及ぼすことを見出した。また、ヘテロ型シクロファンでは過冷却ネマチック相という新しい現象も確認できた。そのため、上の評価が妥当であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、外部刺激に応答して多様な発光色変化を示す柔らかなシクロファンの創製に取り組む。具体的にはデンドロン骨格を導入するための合成ルートを確立し、ある程度かさ高いデンドロンをシクロファンに導入し、その物性を精査する。得られたシクロファンは単独、ないし限定された数で自己集合し、機械的刺激応答ユニットとして作用するはずである。 また、前年度開発したヘテロ型シクロファンの物性評価と、その過冷却相を利用した新しい機能性材料の開発にも取り組む予定である。
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