研究実績の概要 |
近年われわれは二環性の骨格を持つプロリン型のβーアミノ酸を連結したホモオリゴマーが、2-3量体という短いものからすでにコンホメーションのよく制御されたヘリックス構造を取ることを示した。通常のプロリンアミドはシスートランス平衡を取るが、二環性アミノ酸はシス体またはトランス体のみを取る。本研究では、以下の3研究を行った。 (1)細胞のがん化等に関わるタンパク質ータンパク質相互作用であるp53-MDM2/MDMX相互作用を阻害するホモオリゴマーを見出した。阻害活性は鎖長に依存して増大した。4残基のヘリックス分子は、天然のリガンドであるp53のヘリックス部分(15残基ペプチド)と同等の長さを有しており、高い阻害活性を持つことが分かった。 (2)シスアミド体をとる二環性β-アミノ酸2残基を連結させたアミド化合物について、側鎖同士を結んで環構造を形成したところ、リンカーの長さが短いものにおいて、アミド平衡が架橋の前後でシスアミド体からトランスアミド体へと反転したコンホメーションを取ること、また回転障壁が顕著に低下することを見出した。NMR、X線結晶構造解析、計算化学の手法により、架橋によってシスアミド体がトランスアミド体と比べてより不安定化を受けることを明らかにした。さらに、このアミド結合は非平面化しており、アミド結合の異性化は非平面化窒素の反転を伴う過程であることを分子動力学計算により示唆した。 モデル化合物の研究により、二環性人工アミノ酸は橋頭位水素の立体効果により、N末端側に結合したアミノ酸のコンホメーションを制限することを見出した。そこで、トランスアミド体構造を選択的に取る二環性β-アミノ酸とアラニンを交互に縮合したα,β-へテロペプチドについて、プロトンNMRのカップリング定数や分子動力学計算を用いた構造解析を行った。その結果、伸長したヘリックス構造を取ることが示唆された。
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