公募研究
我々はGGAGGAGGAGGAという配列からなるRNA(以下R12)が、状況に応じて柔軟に変化して、プリオンタンパク質を高い親和性で捕捉するRNAアプタマーと酵素活性のスイッチング素子という全く異なる二つの機能を発揮する事を見出してきた。GGAGGAGGAGGAGGAGGAGGAGGA(以下R24)は、R12が二分子で形成する構造を一分子で形成できると考えられる。一分子単独で構造が形成される為、細胞に適用される低いRNA濃度においてもR24の構造は安定に保たれ、高い抗プリオン活性を示すと期待される。実際R24が高い細胞活性を示す結果が得られた。現在R24及びその一塩基置換体R24*の構造解析を進行させている。R12をスイッチング素子として活用する事で、カリウムイオンを感知して酵素活性がオフからオンにスイッチするRNA酵素(リボザイム)を創製する事に成功してきた。HIVのTatタンパク質を捕捉するRNAアプタマーにこの手法を応用する事で、カリウムイオンを感知してTatタンパク質を捕捉する活性がオンになるRNAアプタマーを創製する事に成功した。細胞内の分子混雑下における生体高分子の構造と相互作用は、試験管内の希薄溶液下とは異なっている可能性がある。この事の検証を目指して、タンパク質に関してはヒト細胞中におけるNMRシグナルの観測と解析が報告されてきたが、核酸に関しては報告例がない。今回我々は4重鎖核酸をヒトHela細胞に導入し、そのNMRシグナルを観測する事に初めて成功した。得られたスペクトルは、同一の核酸の試験管におけるスペクトルは異なる点があった。細胞中においては、試験管内とは完全には同一ではない構造を形成している可能性が示唆された。またAPOBEC3蛋白質のスライディング及び非コードRNAとタンパク質の相互作用に関する新たな知見も獲得した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画していたより高活性のアプタマーの創製と機能性核酸の活性のスイッチングに成功した。さらにヒト細胞中の核酸のNMRシグナルを観測する事にも初めて成功した。
より活性が高まったアプタマーに関し、構造解析を進行させて、活性が高まったメカニズムについて構造学的な基盤を得る。核酸に関するin-cell NMR法を進展させ、細胞中と試験管中における核酸の構造と相互作用の違いを解明する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Cell Biosci.
巻: 6 ページ: 4
10.1186/s13578-016-0068-8
Front. Microbiol.
巻: 7 ページ: 587
10.3389/fmicb.2016.00587
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/bio/