公募研究
3Dドメインスワッピングはタンパク質分子間で同一構造領域を交換する現象である。本研究では、様々なヘムタンパク質を対象にループ部位に着目してドメインスワッピングについて調査する。本年度は、Allochromatium vinosum 由来シトクロムc′(AVCP)の2量体をドメインスワッピングにより作製し、この2量体を利用して4量体および高次多量体を構築した。AVCP 4量体はドメインスワップ2量体1つと単量体2つから構成されることがX線結晶構造解析により明らかとなった。ドメインスワップ2量体では、ヘリックスAとヘリックスBを含む領域をプロトマー間で交換していた。4量体でのドメインスワップ2量体サブユニットと単量体サブユニット間の相互作用はネイティブ2量体のサブユニット間の相互作用と類似していた。還元型AVCP 4量体は、ヘム鉄への一酸化炭素の結合により、1つのドメインスワップ2量体と2つの単量体に解離した。さらに、大部分の単量体を除去すると、酸化型ドメインスワップ2量体は高次多量体を形成し、一酸化炭素がヘム鉄に結合すると多量体はドメインスワップ2量体に解離した。また、デッドタイム3 ms、混合体積0.1 mLのストップトフロー混合機を用いてストップトフロー共鳴ラマン装置を作製した。本装置を用いて、ミオグロビンと過酸化水素の反応において、フェリルオキソ種の生成による共鳴ラマンスペクトル変化を観測することに成功し、本装置は高い分解能で酵素と基質の反応に広く適応できることが示された。これらの研究成果は柔らかな分子系の理解に寄与するものである。
2: おおむね順調に進展している
Allochromatium vinosum由来シトクロムc′のドメインスワップ2量体の作製し、ドメインスワップ2量体1つと単量体2つから構成される4量体のX線結晶構造解析に成功した。また、ドメインスワップ2量体のヘム鉄への一酸化炭素の結合・解離を利用した高次多量体の形成・解離制御に成功し、これらの研究成果を学術雑誌に報告した。さらに、新しいストップトフロー共鳴ラマン装置を開発し、学術論文に報告した。
タンパク質の柔らかなループ部位の置換による機能性人工タンパク質の構築を試みる。さらに、他のヘムタンパク質の多量化を試みるとともに、他の非ヘムタンパク質についても多量化および機能化を検討する。最後に、本研究により得られた結果を総括する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 7件、 招待講演 5件)
Angew. Chem. Int. Ed. (Hot Paper)
巻: 56 ページ: 6739-6743
10.1002/anie.201702352
J. Biol. Inorg. Chem.
巻: 22 ページ: 705-712
10.1007/s00775-017-1446-3
Protein Science
巻: 26 ページ: 464-474
10.1002/pro.3090
Journal of Raman Spectroscopy
巻: 48 ページ: 680-685
10.1002/jrs.5100