研究領域 | 理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学 |
研究課題/領域番号 |
16H00841
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井原 栄治 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90243592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポリ(置換メチレン) / 精密重合 / リビング重合 / 立体特異性重合 / 機能性高分子 / 光機能性高分子 |
研究実績の概要 |
研究目的としているジアソ酢酸エステルの精密重合の実現のうち、分子量の制御に関しては、ホスファゼンやデンドロンといった立体的に嵩高いエステル置換基を有するモノマーの重合がリビング的に進行し、分子量の揃ったポリマーや構造の明確なブロック共重合体が得られることを明らかにした。特に、デンドロン含有モノマーの重合に関しては、世代の異なるデンドロンを含んだモノマーの重合挙動の比較により、立体的に嵩高いものほど重合が制御されるということを確認した。 一方、ポリマー主鎖の立体構造(tacticity)の制御に関しては、まず、そのtacticityをNMRにより正確に評価する手法の確立に取り組んでいる。具体的には、重合度と立体構造の明確なオリゴマーを単離してその構造解析を行い、そのNMRの結果をポリマーのtacticityに関連付けることを目指している。現時点では、主鎖に3つの不斉炭素を有するジアゾ酢酸メチル4量体を、4つのジアステレオマーに分離することに成功し、その構造を結晶構造解析により明らかにすることを試みている。さらに、アミジナート/Pd系という新たに開発した重合開始剤系により得られたポリマーの立体構造が、従来の開始剤系により得られたものと比べて、かなり制御されていることを明らかにした。これらの結果を基にして、高度なtacticityの制御を可能とする重合開始剤系の開発を目指した検討を実施する予定である。 機能性高分子の開発に関しては、光機能性官能基としてBODIPYをエステル部に有するモノマーの合成とその重合に成功した。このモノマーとアントラセン含有モノマーとのランダム共重合により得られたポリマーの光物性を現在検討中である。BODIPY、アントラセンを含めた各種の光機能性官能基を有するモノマーの重合により、これらの官能基の集積効果に基づく機能性高分子の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の目的である、ジアゾ酢酸エステルの精密重合の確立について、分子量の制御(リビング重合の確立)と主鎖の立体構造の制御(立体特異性重合の確立)のいずれについても、重要な研究結果を得た。さらに、官能基集積効果を利用した光機能性高分子の開発に繋がる重要な研究成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の研究計画を継続して、当初の計画通りの結果を達成できるよう研究を進展させる。 ジアゾ酢酸エステルの精密重合の確立については、エステル部に各種の置換基を有するモノマーの重合を、様々な構造のPd錯体を開始剤として用いて行い、その結果を詳細に分析し、高度な制御を可能とする重合系の開発を目指す。 さらに、上記の精密重合を利用して、各種の官能基を有するモノマーの重合を行い、機能性高分子の開発への展開を試みる。
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