研究実績の概要 |
本年度はチャネルロドプシンの閉状態および初期開状態の構造サンプリングと、チャネル内水およびイオン分布、そして初期開状態で新規に形成されるαヘリックスカルボニル酸素の水との水素結合についての解析を行った。これまでの研究から、既存のレチナール力場では正確な構造変化が起こらないことが分かっていたため、京都大学林グループと共同でQM/MMーRWFE-SCF法による力場作成をおこなった。作成した力場を用いて、MDシミュレーションにより閉状態/初期開状態のサンプリングを行った。得られた構造に対し、3D-RISM法を適用し、水及びナトリウムイオン分布を計算した。得られた分布から、チャネル内水分布、ナトリウムイオンの平均場ポテンシャルをもとめ、初期開状態でもチャネルは十分には開いておらずバリアが依然として残っていることが分かった。また、実験により示唆されている、初期開状態で新たに生成するαヘリックスカルボニル酸素と水との水素結合の候補を特定した。 また、本領域内の国際共同研究支援をうけて、タイ・カセサート大学のSaree Phongphanphanee博士を招聘し、プルシアンブルーによる選択的イオン吸着に関する研究を行った。まず、量子化学計算によってプルシアンブルー粒子の構造および静電パラメータを決定し、3D-RISM法により、粒子内外の種々のイオン分布(Li+, Na+, K+, Cs+)を求めた。分布はCs+の選択的な吸着を示しており、実験と整合する結果が得られた。また、詳細な結合状態の解析から、吸着位置のイオンサイズ依存性を明らかにした。
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