研究実績の概要 |
水素結合型超分子有機構造体 [(H4BPTC)(azpy)2]n (H4BPTC = biphenyl-3,3’,5,5’-tetracarboxylic acid, azpy = 4,4’-azopyridine)の可逆な構造変化と結晶伸縮挙動について研究を行った。超分子有機構造体はH4BPTCとazpyのメタノール溶液を混合することにより得た。[(H4BPTC)(azpy)2]nの単結晶構造解析の結果、H4BPTC とazpyが水素結合により交互に連結し菱形の格子構造を形成していることが分かった。菱形構造体は互いに三重に貫通し、密な水素結合型超分子構造を形成していた。また、示差走査熱量測定から超分子有機構造体[(H4BPTC)(azpy)2]nが約310Kで構造相転移を示すことが分かった。温度変化による構造変化の解析からazpy分子とH4BPTC 分子がラック・アンド・ピニオン機構類似の配向変化を示し、相転移温度で結晶が異方的な結晶伸縮を示すことが分かった。量子化学計算により、分子内プロトン移動の中間体はカルボキシル基からazpy分子にプロトンが移動した構造を有し、このプロトンリレープロセスに必要なエネルギーは、プロトンの直接移動プロセスに比べて約15 kcal mol-1小さいことが分かった。すなわち、[(H4BPTC)(azpy)2]nの結晶伸縮挙動において、H4BPTCとazpy間のプロトン移動が重要な役割を果たしていることが分かった。
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