研究領域 | 理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学 |
研究課題/領域番号 |
16H00844
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
楊井 伸浩 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90649740)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォトン・アップコンバージョン / 三重項 / 超分子 / スイッチング |
研究実績の概要 |
三重項-三重項消滅に基づくフォトン・アップコンバージョン(TTA-UC)は、低強度の励起光を利用できるため、太陽電池や光触媒反応の高効率化、バイオイメージングなど様々な分野における応用が期待されている。中でも我々は、分子凝縮系における三重項エネルギーマイグレーションを利用すれば、分子拡散に依らない高効率なTTA-UC を達成できることを示してきた。本研究では柔らかな超分子集合系の特徴を活かし、分子が集合構造を形成して初めて生じる酸素バリア能や、分子集合化することによるTTA-UCの熱スイッチングを達成した。 水中で自己集合化しうる両親媒性アクセプターを新規に設計・合成し、ドナーと水中で共集合化させたところ、溶存酸素存在下においてUC発光が観測された。このUC発光強度の時間依存性を測定したところ、3000秒以上がほぼ一定であり、酸素共存下においても安定であることが分かった。これは、水中における自己組織化により色素部位が密にパッキングし、さらに会合体中に形成された水素結合ネットワークにより酸素分子の会合体内への拡散が抑制されたためと考えられる。 本領域内の共同研究により、分子の凝集化によりTTA-UC発光をスイッチングする現象を初めて見出し、昨年度報告した。このコンセプトを更に発展させ、熱刺激により分子の集合・解離を誘起し、TTA-UC発光をスイッチングすることに成功した。ドナーとアクセプターに共通の自己組織化ユニットとしてアルキル化グルタミン酸骨格を導入することで、有機溶媒中において共集合化させることができた。得られた共集合体は加熱により分子分散し、また冷却することで再度集合化することが分かった。集合状態でのみ、励起三重項の寿命がTTAを起こすのに十分長くなることが分かり、TTA-UCスイッチングのコンセプトを一般化できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超分子集合系のダイナミクスを利用し、フォトン・アップコンバージョンのスイッチングについて異なる刺激を利用するという一般化に成功し、本研究の目的である柔らかさとエキシトン機能の相関について明確な結果を示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
超分子集合化による酸素バリア能の発現を一般化していき、分子設計として確立することを目指す。また、新たな領域内共同研究により、フォトン・アップコンバージョンのスイッチングに関して更に多様な外部刺激に応答するシステムの構築を行う予定である。
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