研究領域 | ニュートリノフロンティアの融合と進化 |
研究課題/領域番号 |
16H00859
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 格 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (10400227)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 液体シンチレータ開発 |
研究実績の概要 |
キセノン含有液体シンチレータを用いてニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊を探索するKamLAND-Zen実験では、検出器の極低放射線環境と拡張性において非常に優れた性能を発揮し、世界の実験を大きくリードしている。本研究では、さらに一歩進んで逆階層構造までの探索を実現するため、新型液体シンチレータ検出器による発光点識別を実現することで主要なバックグランド源であるウランの娘核種である214Bi事象を10分の1程度に削減する。これまでの2層型液体シンチレータ検出器は、光到達時間から再構成した位置情報のみを基にして発光点がどちらの層にあるかを区別してきたが、本研究ではこれに発光時定数の情報を加えた検出器を開発する。二重ベータ崩壊核が存在する内層に短時定数発光、外層に長時定数発光の液体シンチレータを導入し、発光時間波形の違いによって外層での発光の寄与の有無を判定する。 大型の検出器において使用実績のあるプソイドクメン(PC)とリニアアルキルベンゼン(LAB)をベースとした液体シンチレータを比較して、発光時定数に違いが現れることを確認した。一般に、シンチレーション光は光電子増倍管に到達するまでに、吸収・再発光や散乱などの過程を経て発光時間波形が歪められる。この効果を正確に評価するために、紫外・可視光の波長領域における吸収・再発光効率、散乱長の測定が必要となる。再発光・散乱の各寄与を高精度で測定するため、発光時間波形・波長情報が同時に得られる光学パラメータ測定装置を製作した。また、キセノン含有液体シンチレータの光透過率を正確に評価するため、気密ステンレスパイプと電動ミラー吊り下げ装置を組み合わせた透過率測定装置を製作し、光学距離設定の自動化のための動作確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標である異なる発光時定数を持つ液体シンチレータの開発を目標としていたが、発光時定数の確認、吸収・再発光効率、散乱長を決定するための光学パラメータ測定装置の製作、及び装置の動作確認が完了した。性能評価のための光学シミュレーションでは、内層のサイズを拡大したジオメトリや粒子生成ツールの作製など、来年度の計画を一部先行して実施している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、測定した2種類の液体シンチレータの光学パラメータ及び光電子増倍管の時間分解能をインプットとしたシミュレーションを行い、大型検出器における発光点識別能を評価する予定である。また、開発した内層用の液体シンチレータに対するキセノンガス溶解度の測定を行い、二重ベータ崩壊核の標的数を維持できることを確認する。
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