ニュートリノは、爆発的天体現象において本質的な存在である。重力崩壊型超新星爆発にて特に顕著で、ニュートリノがエネルギーを中から外へと効率的に輸送することで爆発が起こると考えられている。これを、ニュートリノ駆動爆発と呼ぶ。こうしたニュートリノの効果を定量的に評価するにはニュートリノ輸送方程式をなるべく近似なく解く必要がある。我々のグループでは、Isotropic diffusion source approximation (IDSA) というスキームを用いてニュートリノ輸送を効率的に解き、流体計算と組み合わせたシミュレーションを行なっている。当該年度の成果は以下のものである。これらの成果は論文にまとめて公表した。 1) 超新星爆発シミュレーションで得られている爆発が弱い理由が初期条件にあるのではないかと考え、初期条件の依存性を検証した。これまで一般的に行なわれてきたのは、星の進化計算の結果を初期条件として用いてシミュレーションを開始することであった。この方法では、進化計算で用いられている仮定や手法に依存してしまうため、進化計算を用いない初期条件の作成方法を構築した。この方法は進化計算の結果も再現できるため、従来の初期条件を内包したさらに広いパラメータ領域について検証することができる。この方法を用いて、爆発を起こすのに適した初期条件の条件を明らかにした。 2) 回転を加えた初期条件から3次元シミュレーションを行なった。その結果、low-T/W 不安定性が成長し、渦状の流れが形成され、ニュートリノ駆動爆発を助ける新たなメカニズムを発見した。このメカニズムは、質量の軽い星よりも重い星でより顕著になることが分かった。
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