素粒子の標準模型には、「何故、陽子と電子の電荷の絶対値が21桁以上の精度で等しいのか」などの重大な未解決な謎が存在し、それは、標準模型の背後に新しい物理理論の存在を示唆する。本研究では、ニュートリノを手がかりに新しい物理理論の解明を目指した。今年度は、新しい物理として大統一理論を考え、大統一理論が予言する核子崩壊について、大統一理論に基づく広汎な素粒子模型において、陽子寿命の上限を導出することに取り組んだ。特に、超対称性を持たない大統一理論の模型で、かつ「標準模型ゲージ群に分解されたマルチプレット」のうち一つか二つが将来の高エネルギー実験で観測可能である質量を持ち、更に、SU(5)ゲージ群が大統一のエネルギー・スケール以上で、漸近的自由性を持つものに関して、陽子寿命の上限を導出することを目指した。数値解析の結果、特異的に軽い「標準模型ゲージ群に分解されたマルチプレット」の選び方によっては、ハイパーカミオカンデ実験での検証が可能な陽子寿命の上限が得られることを示した。 また、初期宇宙に起きたことがほぼ確実なインフレーションに関連して、右巻きニュートリノの超対称粒子であるスニュートリノ2つが、インフラトンとカーバトンとして働く可能性について調べた。ニュートリノのディラック湯川相互作用は、ニュートリノの極微質量差とスニュートリノの崩壊幅に関係するので、local non-Gaussianityに関する予言を得た。この場合について、宇宙観測からスニュートリノ質量への制限を得た。
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