研究領域 | ニュートリノフロンティアの融合と進化 |
研究課題/領域番号 |
16H00874
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田島 治 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80391704)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 宇宙背景放射 / 超伝導検出器 |
研究実績の概要 |
CMB(宇宙マイクロ波背景放射)の偏光観測は、宇宙論のみならず、素粒子のひとつニュートリノの質量和についても知見を与える。そのプローブとなる重力レンズBモードが、近年ようやく測定可能となり、ニュートリノ質量和の測定もいよいよ現実味をおびてきた。しかしながら、ニュートリノ質量和(Σmν)の測定と宇宙の再電離度(τ)には強い相関があることが指摘されている。つまり、Σmνの測定精度がτの測定精度で頭打ちしてしまうのである。この困難の解決策が大角度スケールのEモード観測であり、その観測からτの測定精度が向上する。 τの測定を行うためには、前景放射とよばれる銀河放射の影響を理解するための多帯域観測、広い視野を観測するための高速変調にマッチした測定系の構築、そしてこれらに関連した系統誤差のコントロールが重要となる。特に、時間応答性にすぐれた次世代超伝導検出器MKIDとその多重読み出し手法の開発が重要であり、本課題では多重読み出し手法の開発に注力する。 本年度は先行開発した高周波アナログ信号生成・計測(DAC/ADC)ボードを制御する集積回路をアップグレードし、そのファームウェアコーディングを行なった。一対の読み出し線で読みだせる検出器のチャンネル数(多重度)を従来の2倍化した120チャンネル同時読み出しファームウェアを構築した。さらに、本研究で開発した読み出しシステムと試作したMKIDを使って、偏光信号に対する応答性の評価実験をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、先行開発したADC/DACボードを制御する集積回路をアップグレードし、120チャンネル同時に読みだせるファームウェアコーディングを完了したため。なお、その読み出しシステムと試作したMKIDを使っての偏光信号の応答性の評価実験を行う系の冷却に時間がかかったため、評価試験を翌年度初頭まで継続して行なった。
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今後の研究の推進方策 |
開発した読み出し系を実際の観測に実践投入するために、測定系の自動化や検出器評価を行うソフトウェアを充実させていく。また、最先端の超伝導検出器の用途は、宇宙背景放射の観測のみならず、様々な計測に応用できるはずである。そういった用途開拓に向けた機能を付加することも視野に入れた開発を行なっていく。
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