本研究は、優れた放射線耐性で近年注目を集めているダイヤモンド結晶を「大強度ビームモニタ」として実用化し、開発した新ビームモニタでJ-PARC陽子ビームのハロープロファイルを測定、実際にビーム起動調整に役立てる事を目指す。これにより、大強度加速器ビームの新しい運転時プロファイルモニタが実現され、加速器運転への逐次フィードバックに新しい手法を加える事が可能になる。上記研究項目を推進する事で、大強度加速器時代に相応しい新しいビーム品質向上手法を確立し、大強度加速器の性能向上によるニュートリノ・ミューオン両物理での実験感度向上を目指す。 本研究計画は2カ年で完了する予定で、事業初年度にあたるH28年度に、ダイヤモンド検出器試作機の製作を完了した。H29年度には、このダイヤモンド検出器試作機を、J-PARC陽子加速器の30GeVシンクロトロン内部に実際に導入、加速器動作環境下での安定動作を目指した。十分な性能が確認された後、検出器を陽子ビーム軌道内に挿入し、実際に大強度陽子ビームを照射した上で、ダイヤモンド検出器の基礎特性を評価した。ここでは、特に、「ダイヤモンド検出器を用いた陽子ビームプロファイルの測定」並びに「ビーム内陽子数の高感度計数」のふたつの試験を実施。開発したダイヤモンド検出器試作機による優れた性能を確認することに成功した。 将来の高感度ニュートリノ実験を実現するためには、陽子ビームの大強度化は必須であり、そのために解決しなければならない最大の課題は、加速器におけるビームロスの低減である。そこで必要になる高精度プロファイル測定を大強度ビームで実現した。 また、将来の高感度ミューオン実験のためには、加速器での陽子バンチからの漏洩陽子数を高精度で計数する必要があり、これもまた本研究におけるダイヤモンド検出器試作機が、その可能性を実証することに成功した。
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