研究実績の概要 |
将来に計画されている宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光観測と宇宙論的な21cm線の観測は、ニュートリノの質量の絶対値にたいへん感度がある。このことは、主に既存のニュートリノ振動実験が質量の2条差に感度があることと比較すると、相補的である。CMBの偏光観測、21cm線観測に加えて、バリオン音響振動(BAO)の観測を組み合わせることが、我々のアイディアである。21cm線とは中性水素の電子のスピンがフリップするときに放射される輝線である。SKAにより、赤方偏移10あたりに起こる再イオン化の時期に放出される宇宙論的な21cmの輝線を精度よく観測すれば、ニュートリノ質量約O(0.01)eVを持つニュートリノが非相対論化し、宇宙膨張を変更する兆候をとらえることができる。また、Simons ArrayによるCMBの偏光観測も上記の範囲のニュートリノ質量に感度がある。さらにパラメーター決定の上での不定性を除くため、ダークマターとダークエネルギー量に感度のあるBAOの将来観測として、DESI実験のデータを加える。我々が発表した文献 (Y. Oyama, K. Kohri and M. Hazumi JCAP 1602 (2016)no.02, 008)により、次の3つの結論が得られた。1)ニュートリノ質量の階層性を決定できる。2)ニュートリの質量の絶対値を0.04 eVの精度で検出できる。3) ニュートリノ有効世代数を0.1世代の精度で検証できる。実際、これらの実験の本観測が始まる前に、準備として、それらの観測機器の仕様についての理論サイドからの提言を続けて行く予定である。現実的にSimons Arrayについての理論提言については、KEKのCMB実験グループとの連携により、共同研究が続けられている (Oyama et al, 2018 in preparation)。
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