研究実績の概要 |
本研究課題では,酸化物イオン伝導に適した結晶構造の設計により,新構造型の酸化物イオン伝導体を開発することを目的としている.また,既存の新構造に属する酸化物イオン伝導体について,材料の改変を行うことで酸化物イオン伝導度の向上を目指し,さらにイオン伝導のメカニズムを結晶構造解析法に基づき解明することで,より戦略的な酸化物イオン伝導体の開発を進める. 本年度は,2014年に発見したこれまでに報告のない構造に属する酸化物イオン伝導性材料NdBaInO4について,Nd/Ba比を変化させ,イオン伝導度を向上させることに成功した.NdBaInO4は一般組成ABCO4(ここでA,B,Cは異なるサイズ・元素の陽イオン)で記述される材料で,新しい構造型・新しい物質であることから,元素置換等による材料の改変によりイオン伝導度がどのように変化するのかなど明らかになっていないことが多い.そこで,NdBaInO4の元素置換を行い,酸化物イオン伝導度の変化・構造の変化を調べることで,この構造型への理解と,次の構造設計への戦略をたてるための知見を得ることを目指した.Nd/Ba比を変化させたところ,酸化物イオン伝導度が大幅に向上したため,単結晶X線回折法および粉末中性子回折法の相補利用により,過剰なBaが実際にNdの位置に占有していることを実証し,酸化物イオン伝導度が向上した構造的要因を明らかにすることができた.他にも,一般組成ABCO4をもつ新物質・新構造の酸化物イオン伝導体を探索・合成し,いくつか新しいものを発見することにも成功している.
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