公募研究
これまでの研究により,2硼化マグネシウム(MgB2)からMg2+イオンをキレート錯体として取り除くと,サブマイクロメートルサイズの広さを持ったハニカム構造のボロンの2次元シート(1層,2層,多層が存在)が形成することを見出してきました.興味深いことに,このボロンシートには窒素が30%以上も含有しており,詳しい解析の結果,Mg2+イオンを取り除いた直後のボロンシートが化学的に極めて活性であり,室温常圧にもかかわらずキレート剤と反応して窒素を取り込んでいることがわかりました.また,キレート剤と反応しない場合にはボロンのシート構造がくしゃくしゃな構造となった形態をとって安定化することを見出しました(特願2015-067282).本研究ではこのような2硼化金属から形成する化学的に活性なホウ素の2次元シートを安定化させ,単層のボロフェンとして高収率に合成する方法を系統的な素過程の解析や生成物の解析を通じて新しく確立させることを目的としています.今年度は、本領域内の物性公募研究者の中村潤児教授,応用公募研究者の藤田武志准教授,理論公募研究者の岡田晋教授,及び外部研究者との共同研究により,キレート錯体の代りにイオン交換樹脂を用いることでMgB2のMgイオンがプロトンとイオン交換をし,水素化ホウ素の2次元シートが形成することを新たに見出しました.また,詳細な解析の結果,この2次元水素化ホウ素シートは200℃から水素分子を放出することがわかりました.このため,最終目的とする単層ボロンシートを合成するための前駆体として水素化ホウ素シートが利用できる可能性があることが新たにわかりました.
2: おおむね順調に進展している
最終目的である単層ボロンシートの合成に向けて極めて良質な前駆体となる水素化ホウ素シートを合成することが新たにできたため,おおむね順調に進展していると判断しました.
今年度新たに合成に成功した水素化ホウ素シートを前駆体として,加熱や他のイオンとの交換などを通して最終目的である単層ボロンシートを合成します.また,本領域の応用連携研究者の谷口尚博士や物性公募研究者の清水直博士と得られたシート材料を用いた物性研究の共同研究を新たに着手しており,今後は得られたシートの機能性を世界に先駆けて示すことも進めていく予定です.
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