研究実績の概要 |
グラフェン・遷移金属カルコゲニドに代表される「トップダウン型」ナノシートに研究が集中する一方で, 分子・金属イオンから原子層を直接合成する「ボトムアップ型」ナノシートは未だ萌芽的な研究対象であり, 応用展開はおろか有用な物性を示した例は存在しない. 申請者はこれまでに金属錯体を基盤とする「ボトムアップ型」ナノシートにおける機能創出 (光電変換・導電性・エレクトロクロミズム) を世界に先駆けて達成した. 本研究ではこの成果をさらに発展させることを目的に設定した. 今年度はジピリン金属錯体ナノシートの設計を見直し、ポルフィリンをハイブリッドした配位子の設計・合成と、これを用いたナノシートの合成を行った. その結果, 光電変換量子収率が2倍強に, また応答波長も450-550 nmから400-650 nmに拡張され, 可視全領域をカバーすることができるようになった. エレクトロクロミズムを示すテルピリジン金属錯体ナノシートについては, 中心金属を鉄またはコバルトから, 亜鉛へと変更した. その結果得られたナノシートは紫外光照射により青色発光を示した. またカチオン性のフレームワークはアニオン性の色素分子の取り込みを可能とし、色素をゲストとして取り込んだ場合、ホストであるナノシートからゲスト分子への定量的な励起子移動を示すことを見出した。この特性は人工光合成の光捕集系として利用できるものである。
|