研究実績の概要 |
本研究は、グラフェン・カルコゲナイド・酸化物とは全く異なる新しい原子層物質としてナノシートMXeneに着目し、その未開拓な基礎物性の解明を通じて新規物質群に基づく原子層科学の新領域を切り拓くことを研究目標とする。MXeneと総称される導電性ナノシート(組成:Mn+1XnTx, ただしTxは末端基-F, -OH, -Oなど)は、2011年に合成法が報告された全く新しい原子層物質であり、その物性は殆ど明らかになっていない。そこで本研究開発では、多彩な組成のMXeneを合成し、その導電性を含めた物性をA03応用班長汐Gとの共同研究で解明する。また、A04理論班安藤Gとの共同研究により理論計算を行い、系統的な物性理解を図る。更に、多彩な組成の単層MXeneをbuilding unitとして、ヘテロMXene積層膜の作成法を確立して得られたヘテロ積層膜の物性を解明することで、最終的には新規物性現象の創出を狙う。本年度においては、MXeneの物性測定を長汐グループとの共同で行った。その結果、MAX相Ti2AlC、MXene Ti2CTxは半導体的挙動を示すことが明らかとなった。また、安藤グループとの共同でMXeneの電子状態計算を行い、蓄電デバイスの電極活物質として使用した際の電位分布を計算し、非常に特異的な閉じ込め効果が発現していることが分かった。この閉じ込め効果は、電極のキャパシタンスを増大することが分かり、学術的にも工業応用上も非常に意義の大きい成果であると言える。
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