公募研究
芳香環直接π拡張法(APEX反応)を駆使し、幅、長さ、エッジ構造が制御された“均一な”グラフェンナノリボンの合成を行った。パラジウム塩、銀塩、オルトクロラニルを用い、bay領域がケイ素架橋したフェナントレン誘導体をもちいると、フェナントレンのK領域で逐次的にπ拡張反応が進行し、cove型グラフェンナノリボンが一段階で合成できることを見出した。本反応は重合反応とグラフェン化(あるいは脱水素環化、酸化)が同時に行える画期的重合反応であり、一段階π拡張重合(APEX重合)と名付けることとした。合成できるグラフェンナノリボン(GNR)は周辺構造がcove型のGNRであり、分子量分布測定の結果から15万程度の数平均分子量をもつ長さ100 nm以上のGNRであることがわかった。またこのAPEX反応を応用し、様々な芳香環とシロールユニットとの自己APEX重合反応、交互APEX重合反応にも成功した。原子間力顕微鏡(AFM)の結果から、合成したGNRはグラフェン基盤上での自己組織化能を有していることもわかった。本結果は前年度特許申請にあらたなデータを加えPCT出願(PCT/JP2017-003037)を行っており、論文投稿準備中である。本年度の研究結果は当初予定していた研究計画以上の進展をみせており、また原子層科学メンバーや国外研究者と合成したGNRの物性解明についての共同研究を行うきっかけとなるなど、期待される以上の結果をもたらした。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通り、APEX重合反応の実現とグラフェンナノリボンの一段階合成に成功した。合成されたグラフェンナノリボンは構造が精密に制御されたcove型グラフェンナノリボンであり、原子力間顕微鏡観察などによって興味深い自己組織化能を有していることもわかった。また、当初予定していた以上にグラフェンナノリボンに関する共同研究が始まり、今後の研究の発展に大きな期待をもつことができる。
研究計画通り、国内外の共同研究を通じて合成したグラフェンナノリボンについての物性解明研究をすすめる。またAPEX重合反応の適用範囲をさらに推し進め、多様な構造、幅、長さ、官能基をもつグラフェンナノリボン合成を達成する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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