研究領域 | 原子層科学 |
研究課題/領域番号 |
16H00917
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吾郷 浩樹 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10356355)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ材料 / グラフェン / マイクロ・ナノデバイス / 結晶成長 / 触媒・化学プロセス |
研究実績の概要 |
究極的な原子薄膜であるグラフェンは、材料中で最も高い移動度や機械的フレキシビリティ、高い電気伝導度、高い光透過率などの優れた特性を有することから、透明電極、タッチパネル、半導体デバイスなどへの応用が世界中で活発に研究が進められている。現在広く用いられているCVD法で得られるグラフェンはグレインバンダリーや欠陥等が多数存在するため、十分な特性が得られない。そのため、グラフェン本来の優れた特性につながる単結晶グラフェンの合成技術の開発が望まれている。 本研究は巨大なグラフェンの単一グレインを選択的に合成する手法の開発を推進すること、及び二次元原子膜を本領域内の研究者に提供して活発な共同研究を行うことで新たな成果を創出することを目的としている。 当該年度は、グラフェンの核選択成長に関連して、ニッケルマスクを用いて局所的な炭素原料の濃度を制御するという全く新しい手法を見出すことに成功した。ニッケル金属は銅触媒よりもメタンをより多く分解するとともに、炭素を多く固溶することができる。この特性を利用し、ニッケルマスクの中心部に単層グラフェンの結晶核を1個だけ生成させ、直径 2 mmの大きな単結晶グラフェンを位置選択的に合成することに成功した。これまではガスノズルで制御する方法が一件報告されているだけであり、本手法は新たな手法を提供するものといえる。さらに、銅の下にニッケルホイルを設置することで、グラフェンの多層成長も大幅に抑制することも見出している。 上記の研究結果は、グラフェンの成長メカニズムの理解に加え、応用研究を推進する上で非常に大きな成果といえる。 さらに、領域内の複数の研究者にサンプル提供を行うとともに、サンプルの分析や解析で共同研究するなど、本領域の活性化に大きな貢献をした。また、4インチの高品質グラフェン合成法を確立するなど、グラフェンの産業化に向けた取り組みも行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
触媒活性の高いニッケルをマスクとして用いることで、より活性の低い銅触媒上で、単層グラフェンを位置選択的に成長させるというユニークな手法を開発した。この成果はACS Nanoに発表することができた。これは従来にない手法であり、多結晶グラフェンのパターニング技術としても期待される方法であることから、より一層の進展が期待される。 また、領域内での共同研究も活発に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に単層グラフェンの位置選択的な結晶成長を実現できたものの、サイズは1-2 mmとまだ十分ではない。当該年度はより大きなサイズの単結晶グラフェンの合成法の開発を進めるとともに、位置選択の精度向上を目指す。また、エピタキシャルCu上でのグラフェン成長も推し進め、ハイエンドな応用や突出した物性を示す超高品質なグラフェン合成を展開する。 さらに、前年度以上に共同研究を行い、二次元原子膜材料の研究の幅を広げるように共同研究を推進する。
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