昨年度までに、2次元材料であるグラフェン、六方晶窒化ホウ素、窒化炭素においてフェムト秒レーザーによる電場増強効果があることがわかり、本年度はレーザーによる水分子分解反応に必要なレーザーパワー閾値を2次元材料近傍にて2倍近くも下げることが出きることを時間依存密度汎関数理論によるシミュレーションで見出した。この結果はPhys. Rev. B誌に結果を掲載された。さらにカーボンナノチューブ近傍では、パワー閾値を4分の1にまで減少できることも見出し、現在論文執筆中である。これらの知見は、フェムト秒レーザーという光量の大きな光源による化学反応を増強する効果を2次元材料が有していることを強く示唆するものである。 また2次元SSHモデルを層状に積層した系において電子状態やトポロジカル状態の解明を行った。されに、ARPESによる表面状態観測データ解析の高度化、自動化のため情報理論に基づく手法開発を行った。2次元SSHモデルを層状に積層したモデルの電子状態を計算し、ヒンジに局在した「トポロジカル・コーナー」状態を示した。2次元コーナーの角度を変えて、「トポロジカル・コーナー」状態が出現する角度を明らかにした。一般の多角形において、出現するコーナー状態の数とその条件を解明した。このモデルは、対称性を何も想定しないところに特徴があり、今年度幾つかのグループから提案があった結晶トポロジカル絶縁体のコーナー、ヒンジ状態とは異なる。原子層表面のARPES観測データ解析において、一方情報理論に基づいたモデル選択の手法を開発した。テストデータを用いて、ディラックコーンの有無を高精度で判別できることを例示した。
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