研究領域 | 宇宙における分子進化:星間雲から原始惑星系へ |
研究課題/領域番号 |
16H00927
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 今日子 北海道大学, 低温科学研究所, 学術研究員 (70377993)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 結晶化 / 核生成 / 分子動力学計算 / 惑星物質 / 熱進化 |
研究実績の概要 |
本研究では惑星材料物質の熱進化を調べるため、これまで我々が構築してきた加熱・蒸発・再凝縮モデルをさらに発展させ、従来詳しく調べられてこなかった結晶化過程も考慮した物質の熱進化モデルを構築することを目的としている。平成28年度は主に結晶化の古典的核生成理論のキャリブレーションを行うため、微粒子の結晶化の分子動力学計算を行った。大規模並列計算用の分子動力学(MD)計算コードであるLAMMPSを用いて、気相から液相あるいは非晶質相へ凝縮した粒子がのちに結晶化する様子を再現した。MD計算の遂行は主に国内のスーパーコンピュータ(国立天文台の並列計算機)を利用した。本研究では、最大1500万の希ガス(Lennard-Jones分子)を用いて、3 重点以下の温度で気相から液相への核生成および液滴からの結晶化という多段階核生成過程のMD計算を行った。粒子数、体積、エネルギー(NVE)一定の系で,凝縮核が結晶化するには長い待ち時間が必要なため, 数億ステップ(実時間で数 μs)の計算を行った. MD 計算の結果、気相分子から準安定相である過冷却液滴が多数生成し、その後に過冷却液滴内の一部分から核生成が始まり短時間で結晶核が広がり全体が結晶化する様子が得られた。液滴の結晶化はすぐには起きず、ある程度大きく成長してから起きること、生成されたナノ結晶は 5 回対称性を持つ準結晶を含むこと、また結晶化する際には蒸発を伴うことなどが明らかになった。初めに生成される結晶核は小さく、核生成率の決定にはナノサイズ以下の結晶核と液相との界面エネルギーが重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで分子動力学(MD)計算による気相から液相への相変化の均質核生成過程の研究は多数あるが、気相から固相への相変化の再現は難しかった。本研究では、長い待ち時間を計算することにより、最大1500万の希ガス分子(Lennard-Jones分子)を用いて、気相から過冷却液滴への核生成と液滴からの結晶化という多段階核生成過程の再現に成功した。液滴の結晶化はすぐには起きず、ある程度大きく成長してから起きること、生成されたナノ結晶は5回対称性を持つ準結晶を含むこと、また結晶化する際には蒸発を伴うことなど,新しい知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度において、気相からの結晶化の分子動力学計算を行った結果、3重点以下の温度下で計算しても、凝縮核は過冷却液滴であり、その後液滴内の一部から核生成が始まり短時間で全体が結晶化することなどが明らかになった。平成29年度はMD計算から得られた結果と核生成理論との比較検討を行い、ナノ粒子の結晶化に適用できる結晶核生成モデルを構築する。また関連する物質について実験と連携し結晶核生成率を決定する液相ー固体間の界面エネルギーの導出方法を構築する。得られた結果を用いて巨大ガス惑星の周りで発生する微惑星衝撃波による固体微粒子の加熱問題に応用する。衝撃波の強さは連携研究者が算出したガス惑星付近における微惑星の軌道計算結果を用いる。
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