公募研究
本年度は、まずIRC分光データの波長較正を改善し、より精度の高い波長較正を得たスペクトルの導出を可能とした。これに基づき、「あかり」IRCの銀河面星生成領域を中心とした近赤外線スペクトルの解析を進めた。この中で、Extended Green Object (EGO)と呼ばれる4ミクロン帯に超過放射のある一つの天体の解析を行い、一酸化炭素(CO)の基底振動遷移輝線がこの超過の原因であることを明らかにした。また輝線を生じているガスには水素が少ないことが示めされ、同時にCOの輝線が1000km/sを超える速度で青色偏移していることが示唆された。これらの特徴は超新星残骸Cas Aでみられたスペクトルの特徴と類似しており、この天体が超新星残骸である可能性が示唆される。しかし、当該の領域には電波で超新星残骸の兆候がみられるものの、赤外線の分布には超新星残骸とみられる構造的な特徴はなく、本天体の同定はさらに詳細な観測が必要であると結論づけられた。また「あかり」IRCのslit-less分光による銀河面サーベイにより、2つの若い天体候補を発見した。これらの天体は、H2OおよびCO2氷の吸収線の他に、150K程度の一酸化炭素のガスの吸収と XCNと同定される4.6ミクロンを中心にした幅広い吸収バンドが存在する。これらの特徴は若い天体に固有のものであるが、一方、Herschel衛星による観測では遠赤外線では放射が検出されておらず、近赤外線から遠赤外線にかけてのエネルギー分布は背景星である可能性を示唆する。現在この天体のスペクトルの詳細解析を進めている。これらの研究と並行して、「あかり」IRCの銀河面星生成領域の近赤外線分光観測データの解析を進め、進化とともに氷の組成が変化している可能性を見出した。現在さらに詳細な解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
IRC分光データの波長較正を見直し、より精度が高く、信頼性の高い波長較正を導いた。この新しい波長較正に基づいた分光データを基に解析を順調に進めている。この解析の中で、超新星残骸と示唆される天体を見出し、そのスペクトルの詳細解析を行い、学術雑誌に査読論文として発表した。また2つの若い天体候補を発見し、詳細解析を進めている。同時に近赤外線スペクトルの解析も行い、星生成領域の進化に伴い、氷の組成が変化している可能性を見出すなど、今後詳細解析が必要なものの、順調に成果を上げている。
若い星候補のIRC近赤外線スペクトルに対して実験室データに基づいた詳細な吸収線のフィットを行い、他の観測データも加えて、その天体が真に若い天体であるかを十分に吟味する。また、星生成領域の近赤外線分光スペクトルのより精密なモデルフィットを進め、これまで示唆されている傾向を定量的に確認する。新しく較正されたより精度の高いスペクトルを用いて、銀河系内星形成領域のIRCスペクトルデータの詳細な解析を進め、氷の変成過程等を定量的に明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 6件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://komatta.astron.s.u-tokyo.ac.jp