生体分子のホモキラリティが如何にして原始生命発生前の段階で獲得されたかは、未解明の大きな謎の一つである。キラリティの偏りを直接検出する円偏光を用いた分光分析法は、その有力な仮説である宇宙起源説の検証の有力なツールである。本研究では真空紫外領域での円二色性・光学活性・円二色散乱などの円偏光分光技術開発とこれら手法の隕石中などでのキラリティの偏りの直接的かつ非破壊分析手法として有用性や最適な計測法をアミノ酸薄膜・粉末等の隕石模擬試料の測定などから検証している。また必要に応じて、上記手法とマイクロビーム化技術を組み合わせた装置・手法開発等を行っている。本年度は主に本研究の中心となる光学活性ならびに円二色性散乱のマイクロビーム化有無での光学系・測定系などの開発指針の決定と設計および一部機器の導入を行った。現在の円二色性計測システムは、真空紫外分光器から出射した重水素ランプ光源からの真空紫外光を直線偏光子ならびに光弾性変調子とで高速変調された左右円偏光にし、その試料透過光強度を光電子増倍管で測定し、左右円偏光でのわずかな光強度差をロックイン検出するものである。光学活性計測に関しては、試料と光電子増倍管の間に直線偏光子(フッ化マグネシウム製ローションプリズム)を配置し、異常光をカットし常光のみを計測する光学システムを設計した。マイクロビームを用いた計測の際は、試料前後にシュバルツシルト型反射対物レンズをそれぞれ組みこむことで、スポットサイズ50マイクロメートル程度でのビーム径での光学活性測定が可能な設計を行った。また同じく円二色散乱計測に関しても試料直下に真空紫外シンチレータと真空紫外光をカットするフィルタを配置するなどの測定法の開発指針の決定と設計を行った。この設計を基にして、実際の測定手法の開発と評価を次年度に行っていく。
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