アンモニアとの窒素同位体交換反応実験を実施するため、アンモニアガス、およびアンモニア水ー固体間アニール実験を実施した。 隕石から報告されているまたは星間氷へのUV照射実験で確認されている窒素 (N)を含む有機化合物について、15Nに富むアンモニア水と合成試薬を、100 ℃ 1週間という同位体交換を促進する極端な環境下で反応させた。実験は密閉バイアル容器を用いた閉鎖系で行った。実験後、液体またはガスクロマトグラフィー質量分析により、反応前後における有機試薬の窒素同位体比の変化を調べた。 その後、15Nで同位体指標したアンモニアガスを用い、バイアル、または、ガラス管・SUS製の真空ラインを用いて、同様の実験を行った。 隕石中から検出されている窒素含有環状有機化合物である1-アミノピレン(C16H11N)、9-シアノフェナンスレン (C15H9N)、カルバゾール (C12H9N)では、ガス、液体ともに、優位な窒素同位体交換が確認されなかった。一方で、ヘキサメチレンテトラミン (HMT) (C6H12N4)では、アンモニアガスとの反応では優位な窒素同位体交換は見られなかったが、塩基性下 (pH~ 12)におけるアンモニア水との反応で優位な窒素同位体交換が生じることを明らかにした。同様の反応は、60℃、室温でも確かめられた。ガスとの間では交換が起こらなかったことから、その反応には水が必要であることが示唆された。また、反応中、HMTの一部に分解が見られ、分解反応に伴う同位体交換反応が生じている可能性がある。一方、100℃の温度下におけるアンモニア水との加熱反応の核磁気共鳴 (NMR)分析によって、加熱中にHMTの立体配座が変化しており、また、顕著な分解生成物のピークは見られなかったことから、分解に伴う同位体交換だけでなく、加熱中の求核反応によって、窒素同位体交換が生じている可能性が示唆された。
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