研究領域 | 3次元半導体検出器で切り拓く新たな量子イメージングの展開 |
研究課題/領域番号 |
16H00949
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林田 清 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (30222227)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X線干渉計 / X線ピクセル検出器 / CMOS検出器 / 位置分解能 / タルボ干渉計 |
研究実績の概要 |
本研究は位相コントラストイメージングの1手法として実用化の最前線にある、X線タルボ干渉計にたいして、SOI型X線ピクセル検出器を光子エネルギー計数モードで使用することで、装置構成を単純化し、また、SNを高めることを当初の目標にしていた。SOI型X線ピクセル検出器を導入し、マイクロフォーカスX線源と1枚の回折格子を組み合わせた構成(追加のG2格子を用いてモアレを測定することなしに)で拡大撮影で干渉縞の撮影を得ることをねらった。結果、4.8ミクロンピッチの格子とピクセルサイズ30ミクロンのX線ピクセル検出器を用いて、4.4倍の拡大撮影で、X線干渉縞を得ることに成功していた。この時点で当初の目的の前半を達成している。 しかし、本研究を遂行する間に、同じ構成の装置がX線天体の高角度分解能撮像にも応用できることに気が付いた。これを多重像X線干渉計(MIXIM)と命名し、その概念検討と基礎実験も本研究の内容に含めることにした。回折格子とX線ピクセル検出器だけを組み合わせた単純な構成で、サブ秒角の位置分解能を、超小型衛星におさまる50cmサイズで実現する。ただし、この場合、対象は平行光であるため、上記の拡大撮影より高い位置分解能の検出器が必要になる。そこで、我々は、ピクセルサイズ4.25ミクロンの可視光用CMOS検出器を導入、これが室温動作でX線光子検出できることを示した。これを用いて、SPring8の200mビームラインで準平行光を照射、12.4keVのX線に対して46cmの格子-検出器間距離で干渉縞を検出することに成功した。像幅は1秒角に対応する。同時にX線偏光検出にも成功した。近傍活動銀河核のトーラスを偏光情報をまじえて撮像分解し、活動銀河核統一モデルの検証を目ざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な目標として新たに設定した、平行光を用いたX線干渉縞検出に成功した。これを実現するために必要なのがX線光子検出の高い位置分解能である。サブピクセルの位置分解能を得るデータ処理の手法、電荷分割解析を導入したことに加え、可視光用に開発されている微小ピクセル(4.25ミクロン)のCMOS検出器に着目、X線検出できることを実証した点が大きい。建物建て替えにより実験装置の移動、より開口率の小さい回折格子の調達のスケジュールが遅れ、期間延長したことを考慮しても、当初の予定より進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究目標は地上用のX線タルボ干渉計の一部改良にあったが、研究の途中で発案した天文用X線干渉計、多重像X線干渉計は原理的発明で、独自性がより高い。今後はこちらに研究の主眼をおいていきたい。 これまで多重像X線干渉計に使用してきたピッチ4.8ミクロンの回折格子は、X線タルボ干渉計で用いられるのと同じ開口率0.5のものであった。SPring8実験で像幅1秒角相当の干渉縞を得た際にもこれを用いている。現在納入待ちの状態にあるのが、開口率0.2の回折格子で、これを使用することで、0.4秒角、つまりChandra衛星の分解能を超える解像度を得ることをめざしている。 本研究で提案している多重像X線干渉計は、もともと超小型衛星を念頭においたもので、それが第一目標であることかわりはないが、具体的な観測を検討をしていく過程で、フォーメーションフライトを利用し、例えば100mの距離に格子と検出器を設置するアイデアも発案している。この場合、0.01秒角という角度分解能が期待される。
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