研究領域 | 3次元半導体検出器で切り拓く新たな量子イメージングの展開 |
研究課題/領域番号 |
16H00950
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石野 宏和 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90323782)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SOI / ピクセルセンサー / 極低温光学 |
研究実績の概要 |
SOI (Silicon On Insulator)技術を用いた温度が4Kの極低温で作動する可視光ピクセルセンサーを開発する。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光の精密測定により、宇宙ビックバン以前に起きたインフレーションで発生した原始重力波の探索を行う予定である。この測定には、熱雑音を抑制するために、極低温に冷却した光学系を用いる必要がある。光学系に用いる鏡やそれを支持する構造は、熱収縮のため、室温の形状からゆがんだりずれたりする。その形状変化は、余分な系統誤差を生じる可能性がある。予め光学系のモデルを構築し、シミュレーションによりその変形を予言できれば、補正することができる。モデル構築には、実測による歪みを測定する必要がある。本研究では、焦点面にSOIピクセル検出器を配置し、外部から導入したレーザー光の照射位置を測定し、温度変化によるずれを測定することにより、光学系モデルを構築することが目的である。極低温で作動させるためには、低消費電力の回路を形成する必要がある。SOI上で形成されたFET単体は、0.3Kの極低温でも作動することが確認されているので、低消費電力回路の設計をおこなった。回路シミュレーションとCADを用いて回路の設計およびレイアウトを行い、実機を作製した。室温での動作確認は完了した。また、同時に極低温環境に設置されたSOIピクセルセンサーを読み出すためのシステムの構築を行った。既存のFPGAを用いた回路は極低温では使えないので、配線を伸ばした状態で、外部からコントロール信号を与える。最新の小型PCを用いることにより、プロトコルディジタル信号を生成し、ピクセル検出器の作動に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低温用ピクセル検出器のデザイン・レイアウトを完了し、実機を作製した。SOI上のFETの動作(ソース・ドレイン電流とゲート・ソース間電圧のIVカーブ)を取得し、概ね期待通りの振る舞いを得た。極低温環境下で信号を読み出すシステムを新たに開発し、小型PCを用いることにより、制御に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
SOIピクセル検出器の新しい読み出しシステムの構築に成功したので、今年度はピクセルセンサーを冷却し、外部からレーザー照射を行うことにより、低温・極低温での動作確認を行う。まずは、液体窒素・液体ヘリウムを入れるデュワーを用いて確認を行う。次に1/3スケールされた光学実機をXYステージを設置し、焦点面に設置されたSOIピクセルセンサーを用いて、光学系に入射されたレーザー光の焦点面の位置を測定する。XYステージを動かし、焦点面での照射位置の変化と、シミュレーションの比較から、光学系のモデルを構築する。光学系と検出器、ステージが一体となったシステムを冷却シュラウドにいれ、外部からレーザー光を照射し、焦点位置での温度変化を測定する。
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