研究領域 | 分子アーキテクトニクス:単一分子の組織化と新機能創成 |
研究課題/領域番号 |
16H00957
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西原 寛 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70156090)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノシート / CONASH / 二次元 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
グラフェンに代表される二次元物質は特異な性質を示すため、基礎研究に加えて次世代電子デバイス等の応用研究が活発である。もし多様な化学構造や幾何構造を有し、特異な化学的・物理的性質を示す金属錯体をユニットとした二次元物質「配位ナノシート、CONASH」が創製できれば、新物性・新機能の創出に繋がる。申請者は、金属イオンと有機配位子との二相界面での錯形成反応を用いて多層および単層のCONASH の合成研究を展開してきた。既に、レドックス活性かつ導電性のメタラジチオレンCONASH、エレクトロクロミック特性を示すビス(テルピリジン)金属CONASH、光電変換機能を示すビス(ジピリナト)亜鉛CONASH を報告した。本研究では、メタラジチオレンCONASH のように錯体ユニット間に強い電子・磁気相互作用を有する「強電子相関系CONASH」の新物質群を開拓し、その機能性を明らかにする。 本年度は白金とベンゼンヘキサチオール(BHT)からなる強電子相関系CONASHの合成を進めた。これまでに我々はニッケルとBHTからなるCONASHを報告してきたが、同様の合成法に従い白金とBHTを反応させると副生成物として白金ナノ粒子が生成することが明らかになった。合成法を様々に改良・検討した結果、BHTアニオン(ベンゼンヘキサチオラトアニオン)をキャップ配位子で保護して用いることで目的とする白金CONASHが得られることを見出した。 また光機能性を有する新しいCONASHとしてポルフィリン骨格を有するビスジピリナト亜鉛CONASHを合成し、その光電変換特性を調べたところ、我々が以前に報告したビスジピリナト亜鉛CONASHよりも高い光電変換能を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに新しい強電子相関系CONASHとして白金とベンゼンヘキサチオール(BHT)からなるCONASHの合成法を確立することができた。このCONASHは二次元トポロジカル絶縁体となることが期待されているが、白金の重原子効果により、これまで研究されてきたニッケルやパラジウムCONASHに比べバンド分散において大きなバンドギャップを有するという特長が指摘されていることから、本物質の合成法を確立したことは研究目的の実現にあたり大きな意義を有する。その他、ベンゼンヘキサチオールの硫黄原子を一部他の原子に置換した多座配位子を用いた強電子相関系CONASHの合成研究も進めている処である。このようなことから研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
白金CONASHの構造や機能を明らかにする。具体的には、白金CONASHが二次元トポロジカル絶縁体特性を有するかどうかをプローブ顕微鏡や光電子分光を用いて調査する。この調査のためには、白金CONASHを酸化/還元することによりフェルミ準位を適切なエネルギーに調整することが必要不可欠である。そのために、白金CONASHのレドックス特性を解析する。また材料の大面積化も必要であるため、合成法を工夫して、100マイクロメートルオーダーの大きさをもつ結晶性白金CONASHの作製法の確立を目指す。 新しい強電子相関系CONASHの開発も引き続き進める。
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