本研究は独自のナノギャップ電極作製手法について、その低コスト化と作製した電極活用法の一つとして分子センサーの実現を目指す。低コスト化については、平成28年度にある程度達成している。平成29年度は、独自の作製手法で作製したナノギャップ電極についてギャップサイズの検証を行った。作製後の電流-電圧カーブからフィッティングにより算出されるギャップ幅は約1nmであるが、ギャップ幅が小さすぎて電子顕微鏡などで直接構造を観察することは難しかった。そこで分子長0.9nmの分子を作製ナノギャップ間に展開し、電流-電圧カーブを測定することで評価した。その結果、作製時の条件によって電極間に分子の架橋非架橋を制御できた。すなわちギャップ幅が分子長以下、以上であることを示しており、約1nmのギャップ幅を有していることが明らかとなった。 また特記すべき点として、分子が片方の電極にのみ吸着した状態でも、吸着前後でトンネル抵抗として変化を検出している点である。この点は、ナノギャップ長が約1nmで常にトンネル電流が流れるほど電極間隔が漸近していることを示しており、分子の状態密度に依存したトンネル電流を計測できていることを示している。この点を利用し、ギャップ間に用意した分子の状態密度の変化を利用した分子センサーのデモンストレーションを行った。この計でセンシング感度を評価すると、集合体としてセンサー分子を構成していたものと比べ約100倍の感度向上が明らかとなった。 今後は、前述の分子センサーなど分子の特徴を活かしたデバイス研究に本技術を役立てたい。
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