研究領域 | トポロジーが紡ぐ物質科学のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
16H00981
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤岡 淳 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80609488)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジカル半金属 / 強相関電子系 |
研究実績の概要 |
本年度はNd2Ir2O7において圧力誘起モット転移を制御した際の磁気輸送特性を系統的に調べ、モット転移近傍で異常な量子臨界性が生じることを明らかにした。磁場の方位に強く依存する巨大磁気抵抗効果および異常ホール効果が発現することを見出した。圧力の印加と共に反強磁性モット絶縁体の転移温度が減少している様子が分かった。理論計算による電子相の予測と合わせて考察すると低温・低磁場の伝導度が低い領域は反強磁性モット絶縁相で、それを取り囲む形で反強磁性ワイル半金属相が生じており、更にその外側に常磁性半金属相が生じていることが分かった。磁場-温度プロットを行うと、圧力の増加に伴ってモット絶縁体相とワイル半金属相の領域が低温・低磁場へと収縮している様子が分かった。このようなモット臨界性の振る舞いは従来のモット転移系では例がなく、強相関ワイル半金属系に特有の新しい量子臨界現象であると言える。 トポロジカルな電磁気応答は、電子間の相互作用が顕在化した強相関ディラック電子系においても見る事ができる。ペロフスカイト型SrIrO3はフェルミエネルギー付近にディラック型バンド分散をもつ半金属であることが知られている強相関電子材料である。強相関ペロフスカイト型酸化物は界面や超構造の作製による量子機能性の拡張性が高い材料であるが、SrIrO3ではディラック電子による電子物性が検出されていなかった。本年度は精密組成制御したSrIrO3の合成を行い、強相関ディラック電子に特有の正の巨大磁気抵抗効果が生じる事を見出した。特に、強相関効果によって電子のスピン自由度とバンド構造のトポロジー変化が強く結びついていることに由来している可能性が高いことが分かった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パイロクロア系での単結晶を用いた研究は概ね順調に進んだ。ペロフスカイト系での研究も合成と基礎物性測定については特に問題なく進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
(Nd1-xPrx)2Ir2O7混晶系、(Nd1-xSmx)2Ir2O7混晶系において走査型プローブ顕微鏡を用いて電気伝導度マッピング測定を行い、金属的磁壁の実空間構造を可視化する。組成や磁場で電子相を変化させた際の磁壁の厚み、伝導度、形状、ピン止めの強さなどを系統的に調べ、バンドのトポロジー構造とエッジ状態の関係を明らかにする。 ペロフスカイト型AIrO3 (A=アルカリ土類イオン)において外部磁場や磁性イオンドープによる強磁性秩序の誘起によってワイル半金属状態へのトポロジカル転移の検出を試みる。圧力印加・Aサイト組成変化によって格子歪みを制御した際の基礎物性も系統的に調べ、トポロジカル転移に伴った巨大磁気抵抗やベリー位相による異常ホール効果を探索する。
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