研究領域 | トポロジーが紡ぐ物質科学のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
16H00991
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柳瀬 陽一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70332575)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジカル超伝導 / ワイル超伝導 |
研究実績の概要 |
(1)近年の物性物理学ではトポロジカルに非自明な絶縁体や超伝導の研究が精力的に進められている。これまで量子凝縮相はその対称性に基づいて分類されてきたが、相補的な分類学としてトポロジーの研究が発展したと見ることも出来る。トポロジカル超伝導体ではマヨラナ粒子が出現し、その非局所性から量子計算の素子としても注目されている。その候補とされるスピン三重項超伝導物質について研究した結果、以下の成果を得た。 (A)重い電子系スピン三重項超伝導体として長く注目を集めてきたUPt3のB相が非共型空間群対称性に守られたワイル超伝導であることを示した。 (B)UPt3のA相がグライド対称性に守られた非共型トポロジカル超伝導相であることを同定した。
(2)一方で、スピン三重項超伝導やカイラル超伝導を実現する物質が非常に少ないためトポロジカル超伝導体となる物質が少ないことがトポロジカル超伝導分野の課題となっている。弱相関電子系のS波超伝導はトポロジカルに自明であり、強相関電子系の異方的超伝導は多くの場合ギャップがなくトポロジカル超伝導であるための条件を満たさない。本研究では、強相関電子系に数多く見られるd波超伝導体などのギャップレス超伝導体を「強いトポロジカル超伝導体」に変えることが出来る一般的な方法を提案した。具体的には、銅酸化物高温超伝導や重い電子系超伝導などに数多く見られるd波超伝導は通常の場合はギャップレスであり、強い意味のトポロジカル相になりえないが、空間反転対称性が破れた環境下ではスピン偏極を人工的に導入することでトポロジカル超伝導状態を実現できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に幾つかの強相関電子系超伝導体のトポロジカルな性質を解析した結果、これまでに知られていないトポロジカル相を発見することができた。それらの成果により、強相関トポロジカル超伝導相を研究することの重要性を示すことができた。同時に様々な理論手法を身につけることができたため、今後一層の発展に結び付けられると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、重い電子系や遷移金属酸化物等の強相関電子系トポロジカル超伝導相を研究する。特に、微視的モデルの構築から対称性の解析、さらにK理論によるトポロジーの解析までを一貫して行う。そのような包括的な理論研究により物質におけるトポロジカル相の発見と同定に至ることを目標とする。
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