研究領域 | トポロジーが紡ぐ物質科学のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
16H00994
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70251486)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低温物性 / 超流動 / トポロジカル超流動 / トポロジー物質科学 / 微細加工 |
研究実績の概要 |
本研究は、トポロジカル超流動体の候補物質である超流動ヘリウム3-A相の2次元薄膜に期待されるカイラルエッジ流もしくは巨視的軌道角運動量を実験で検証し、トポロジー物質科学の発展に資することを目的とする。2次元ヘリウム3-A相薄膜は時間反転対称性が破れたカイラル超流動体であり、マヨラナ粒子の寄与を持つカイラルエッジ質量流が期待される。本研究の目標として、膜厚1μmの擬2次元A相薄膜にオーダーhN/2(hはディラック定数、N/2は液体ヘリウム3中のクーパー対の総数)で生じうる、カイラルエッジ流の直接蜆測を目指す。これを観測するため、マイクロ機械加工で作成された円盤空間を持つねじれ振動子に生じるエッジ流由来のトルクを、超伝導SQUIDを利用した微小変位測定装置で測定する。 平成28年度は、実験装置の準備を行った。厚みlμmの円盤状空間を持つ銅製容器を有するねじれ振動子を製作したが、最重要部分である円盤空間の無酸素銅表面が、原因不明の酸化を起こして使用できなくなった。この原因は調査中である。このため代替の銅容器を作成すると共に、真空中で保存するという改良を行った。また実験に必要なSQUID測定系、動作テスト用の回転クライオスタット、およびPrNi5核断熱消磁ステージを準備した。回転クライオスタットの開発については、論文にまとめ出版した。PrNi5核断熱ステージは、熱スイッチの設計変更を経て準備を完了した。また、新学術領域研究の研究会に3回出席し、カイラルエッジ流の観測方法についての議論を関連研究者と行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロ機械加工で作成した無酸素銅容器をデシケータで保存していたところ、表面が変質して平坦度が失われるという予想外の問題が生じた。この原因を調べると共に、円盤容器を再度加工し、真空デシケータに保存する改善を行った。銅容器の製作を再度行ったため、数ヶ月の遅れが生じている。また、並行して準備してきたPrNi5核断熱消磁ステージも、熱スイッチの構造に問題があることが判り、設計変更して再製作を行った。また銅サポートのアニールにも予定以上の時間を要した。これらを合わせて数ヶ月の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ねじれ振動子の組み上げと調整の後、昨年度準備した回転クライオスタット(到達温度1K)で超流動ヘリウム4を用いた動作テストを進めていく。このテスト実験により、角運動量検出感度の確認を行う。これと並行してPrNi5核断熱消磁ステージの準備を進め、超低温生成を確認後にねじれ振動子を設置して、角運動量探索実験を進めていく。
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