研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01001
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
森 聖治 茨城大学, 理学部, 教授 (50332549)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子化学計算 / 金属触媒 / 立体選択性 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の検討を行った。 (1) 工業的にもメントール合成で重要なRh(I)-BINAP触媒によるアリルアミンの水素異性化の反応経路を人工力誘起反応(AFIR)法により探索すると、複雑な反応経路ネットワークが見つかった。さらにこの複雑な反応経路ネットワークから有力な反応経路に絞る際に、グラフ理論に基づいたPrimアルゴリズムが有効であることを示した。この論文は学術誌論文Chemical ScienceへのEdge Articleとしての掲載を許可された。本研究は同じ新学術領域の計画班員との共同研究の成果である。 (2) Ni触媒によるメトキシナフタレンとフェニルボロン酸のクロスカップリング反応のメカニズムの解明を行い、添加物としてのCsFの効果、配位子の効果、とくにカルベン配位子を用いることによる反応の加速効果に関して、分散力を含んだ密度汎関数法計算を用いて解明し、論文投稿に近い段階まで進んだ。本研究は同じ新学術領域の公募班員との共同研究の成果であり、塩を含まないカルベン配位子を用いた場合の反応の検討など、追加実験も行った。 (3)次亜ヨウ素酸四級アンモニウムの酸化反応を用いたケトフェノール類の分子内シクロエーテル化反応について、Me4N+をモデルとして用い、量子化学計算を用いて現在反応機構を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rh触媒の反応メカニズムを探索しただけでなく、グラフ理論に基づくアルゴリズムを組み合わせたということで、独創性が高く、論文掲載まで至った。これらに関する研究の進捗状況は順調である。一方、次亜ヨウ素酸塩の酸化反応を用いたケトフェノール類の分子内環化反応については、四級アンモニウム塩の単純なモデルを用いて求まった反応経路では実験的エナンチオ選択性を説明できないことがわかり、今後の対策を考える。今後も、共同研究による領域の発展に寄与したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、金属触媒反応に関する研究を行うほか、人工酵素の設計を見据えて、酵素反応機構も本課題で推進する。今後、高性能機能性分子の設計のため、理論と実験を融合した国際共同研究を行う。領域間共同研究の場合、今後は大学院生の受け入れが必要になる。
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