前年度の結果より、当初想定したとおりにニトロキシルラジカル部位が駆動していないことが推測された。このため2017年度は、抜本的な配位子構造の見直しを視野に入れた検討を行なった。すなわち、多くの有機化合物に含まれるC-H結合を切断可能なBDE 値(90~110 kcal/mol)を備える基本構造、すなわちニトロキシル基以外の新規HATラジカル構造の探索に、錯体機能開拓と並行して注力してきた。 その結果、可視光レドックス触媒共存下に、ジアリールスルホンアミド1またはリン酸から酸化的に生成されるヘテロ原子ラジカルが強力なC(sp3)-H活性化能を示すことを見いだした。これらはまたHAT触媒としていくつかのC(sp3)-H変換法に付すことが可能であった。 この進展を踏まえ今後は、ニトロキシルラジカル構造の使用に拘泥せず、より独自性の高い発見であるスルホンアミジラジカルまたはリン酸ラジカルを金属配位子に組み込む方針にて、当初予定していた錯体触媒創製を目指す予定である。
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