研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01009
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小池 隆司 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30451991)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機化学 / 光触媒 / 可視光エネルギー / 有機フッ素化学 |
研究実績の概要 |
フルオロアルキル化合物は医農薬や機能性材料において欠くことのできない化合物である。そのため高選択・高効率なフルオロアルキル化反応の開発が望まれている。これまでさまざまなフルオロアルキル化剤が開発され、フルオロアルキル化反応が検討されてきた。しかしながら、実用的なフルオロアルキル化反応を実現するためには、入手容易なフルオロアルキル源を用いた反応が不可欠である。本研究では、入手容易なフルオロアルキルカルボン酸類を用いた光触媒的なフルオロアルキル化反応の開発を目的に、新しい金属錯体光触媒の開発に取り組んでいる。 平成28年度はまず、超電子求引性置換基として機能するペンタフルオロサルファニル(SF5)基に着目し、SF5基を有する様々な新規フェニルピリジン配位子を合成した。つぎに、合成した配位子を有する新しいイリジウム光触媒の合成も達成した。さらに、合成した錯体の光物理化学的性質を詳細に調べ、配位子の構造をチューニングすることで既報の錯体光触媒よりも高い酸化能力を有する触媒の合成が可能であることがわかった。予備的な知見ではあるが、可視光照射下、新規なイリジウム光触媒は、トリフルオロメタンスルフィン酸塩をトリフルオロメチル源とするアルケン類のヒドロトリフルオロメチル化に高い活性を示すことを明らかにした。しかし、トリフルオロ酢酸塩を用いた反応は進行せず、さらなる光触媒性能のチューニングが必要である。平成29年度は、光触媒の酸化力を向上させる添加剤も調べ、フルオロカルボン酸を基質とする反応を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画通りSF5基を有する新規な配位子及び金属錯体光触媒の合成を達成した。また、合成した錯体の性質は予想通りに性能が向上していた。しかし、触媒能力としてはいまだ不十分であり、平成29年度にさらに配位子や錯体の構造最適化を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた配位子設計の知見をもとにさらに高い性能を発現すると期待できる錯体光触媒の合成をめざす。また、すでに合成した光触媒を用いたフルオロアルキルカルボン酸塩を基質とする反応開発にも取り組む。触媒の励起状態における酸化力では反応を駆動できない場合は、酸化剤を添加し触媒の酸化力を向上させ反応を検討する。
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