研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01011
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山口 潤一郎 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00529026)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 芳香族エステル / 脱カルボニル化反応 / パラジウム / ニッケル / カップリング / アルキニル化 / ジアリールエーテル |
研究実績の概要 |
芳香族カルボン酸誘導体は市販試薬や合成中間体として頻繁に見られる合成化学における「ユビキタス構造体」である。芳香族カルボン酸誘導体は非常に安価であり、複素環合成法においては、原料にカルボン酸誘導体が用いられ、合成後の芳香環上にカルボン酸、およびエステル基は保持される。それらを他の官能基に変換することなく、直接、炭素骨格やヘテロ原子を含む化合物へ変換することは、工程数を低減させるのみならず、合成戦略を一新できる可能性がある。 本研究では、本研究では、先に見出していた2種類の芳香族エステルのカップリング反応(ニッケル触媒による脱エステル型C-Hアリール化反応・ニッケル触媒による鈴木ー宮浦型カップリング反応)を基盤とし、潜在的な求核剤を様々なヘテロ原子を含む化合物や炭素骨格へと大幅に拡大を試みた。すなわち、芳香族エステルから直接炭素―炭素結合形成、炭素―ヘテロ原子結合反応の開発を行った。その結果、 1.パラジウム触媒を用いた脱カルボニル型鈴木―宮浦カップリング反応 2. パラジウム触媒を用いた芳香族エステルの脱カルボニル型アルキニル化反応 3. パラジウム/ニッケル触媒による芳香族エステルからのジアリールエーテル合成 を見出すことができた。1および2は既存の有機ハロゲン化合物の代替としてのみ有効であるが、3に関してはフェニルエステルから形式的に脱一酸化炭素反応により対応するジアリールエーテルを与え、反応形式が単純ではあるが全く新しいエーテル化反応を開発することに成功した。これら新奇反応を進行させる鍵は、独自に開発したdcyptという配位子である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
潜在的な求核剤を様々なヘテロ原子を含む化合物や炭素骨格へと拡大を試み、3種類の求核剤を新たに用いることができることを発見した。これらは既に論文として報告しており、初期的な知見としてはこれらの他にさらに3種類の求核剤を発見している。さらにこれらを促進する触媒の配位子は近日中に販売予定である。したがって、現在本研究は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
独自の触媒dcyptは効果的ではあるが、150度という高温を必要とするところが改良すべき点である。今後は配位子をさらに改良することでこの課題を乗り越えていきたい。また、現在既に発見している求核剤との反応の最適化を行い、論文として発表する予定である。
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