研究実績の概要 |
今年度は4,4'-ビピリジル骨格を基盤とした多座配位子および、対応するレニウム錯体の合成を行った。金属配位部分と4,4'-ビピリジル骨格に別々に置換基を導入することで、金属への電子供与能と外部からの電子受容能を独立に調整することができた。これは従来のレニウム2,2’ービリリジル錯体ではできなかった触媒のなチューニング法であった。実際にその酸化電位、還元電位に応じて二酸化炭素の電気化学的還元反応の活性に違いが出ることを見出した。これらの結果は二酸化炭素還元触媒の設計に新たな指針を与えるものである。 また、ジアザポルフィリン鉄錯体の合成を行い、アルカンの触媒的酸化反応も検討した。エチルベンゼン誘導体だけでなく、アダマンタンやシクロオクタンの酸化反応も速やかに進行することを見出した。興味深いことに、類似の骨格を持つポルフィリン鉄錯体と比較し、より高い触媒活性を持つことを明らかにした。これはジアザポルフィリンの高い電子受容性のため鉄上の電子密度の低下に由来し、オキソ種の反応性の向上が理由であると考えている。実際に電気化学的測定により鉄上の電子密度が低下していることを確認した。また、予備的な反応速度解析によりオキソ種によるアルカンからの水素引き抜きが律速段階であることも明らかにした。今後は鉄オキソ錯体の直接的観測や詳細な反応速度解析を行うことで反応機構を明らかにし、より高活性な触媒の設計へとつなげたい。
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