研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01014
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北村 雅人 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (50169885)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多座配位子 / 不斉水素化 |
研究実績の概要 |
sp3P/sp3N/sp2N混合系直線性3座配位子H-PN(H)NのRu錯体 (fac-[Ru(PN(H)N)(dmso)3](BF4)2)はキレート性・非キレート性を問わず立体要制度の高い多様なケトンを効率的に不斉水素化できるはじめての成功例である。DMSOを反応系に共存させることにより、柔軟なPN(H)N配位子の配位構造をfacへと収斂させる。このことが高活性、高選択性獲得の鍵である。本年度では、すでに確立しているH-PN(H)N配位子合成を、10グラム規模で実施した。また、3位にフェニル基をもつ Ph-PN(H)N配位子の合成法を確立した。この配位子を用いてルテニウム錯体の合成を試みた結果、DMSOを過剰に添加することなくfac錯体を選択的に形成することを明らかとした。予備的に不斉水素化においても同様のエナンチオ選択性で反応が進行することを確認している。さらに、H-PN(H)N-Ru錯体触媒を用いるt-アルキルケトン類の不斉水素化の機構解明に向けて、その構造化学的調査を行なった。機構解明の理解を深めるべく、fac-[Ru(PN(H)N)(dmso)3](BF4)2の静的・動的な構造調査を おこなった結果、想定される活性種であるジヒドリド錯体fac-RuH2(PN(H)N)(dmso)および休止状態あるいはoff- loopのヒドリドアルコキシド錯体fac-RuH(CH3O)(PN(H)N)(dmso)、ヒドリドアミド錯体fac-RuH(PNN)(dmso)2を観 測し、それらの立体構造を明確とした。いずれの錯体もfac構造を維持している。さらに、配位子のNH部は塩基性条件下NKないしNLiへと変換され、対応 するアミドルテネート錯体が合成できることも明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていたfac選択的配位子の合成に成功した。また、懸案の課題であった不斉水素化反応の機構解明に向けて重要な構造化学的情報を得るに至った。おおむね計画通りに進行しているとしてよい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた情報をもとに、不斉水素化反応の想定触媒サイクルの完全明確化を目指す。特に、先に示したRu-NH種およびRu-NK種の触媒反応への関与に興味が持たれる。 これまでにBINAP-Ru-diamine錯体触媒系において、同様の検証がなされており、NK種の存在も示唆されている。 塩基濃度、基質の種類と反応性との関係をそれらのpKaとともに議論することによって重要な知見が得られると 期待している。加えて、新規立体選択的多座配位子の合成に着手する。1-(2-アルキル-1H-インデン-3-イル)ナフタレンをキラル炭素骨格とし、ナフチル基の2位にLH (L: sp3S, sp3O, sp3NR)を組み入れる。反応場構築には 、すでに実績のある「DACat」を指導原理とし、結合組み換え型(Metathesis)とレドックス型(Redox)の反応に分 類して錯体への不斉触媒機能の賦与を目指す。
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