研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01019
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依光 英樹 京都大学, 理学研究科, 教授 (00372566)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘテロ芳香環 / 遷移金属触媒 / ホウ素 |
研究実績の概要 |
1)ニッケル触媒を用いたベンゾフランのC2-O結合に対するホウ素挿入反応 含窒素複素環カルベン配位子の一つであるIPrを有するニッケル触媒存在下、ベンゾフランに対してビスピナコラートジボロンを作用させると、ベンゾフランのC2-O結合に対しホウ素原子が位置選択的に挿入され、生成物としてベンズオキサボリンが得られた。本触媒系はベンゾフランから一段階でホウ素含有ヘテロ芳香環を得る革新的な手法である。得られたベンズオキサボリンは、有機ホウ素化合物としてカルボニル化や鈴木・宮浦クロスカップリングに用いることが可能であった。また、ホウ素上にアリール基を導入することで、ホウ素を介して共役が拡張し、青色発光を示す蛍光性分子を見つけることができた。 2)ニッケル触媒によるジベンゾフランの開環アリール化を経るトリフェニレンへの変換 ベンゾフランに対するホウ素挿入反応の開発途上において、含窒素複素環カルベン配位子を有するニッケル触媒がジベンゾフランの炭素-酸素結合切断に対しても有効だと着想した。検討の結果、I(2-Ad)を有するニッケル触媒存在下、アリールマグネシウム反応剤を用いることで開環アリール化が進行することを見いだした。得られた2-ヒドロキシターアリールは対応するアリールトリフラートへ変換した後、パラジウム触媒存在下、あるいは紫外光照射下における閉環反応によりトリフェニレンへ変換可能であった。つまりニッケル触媒による開環アリール化を起点とし、ジベンゾフランのトリフェニレンへの芳香環メタモーフォシスを達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遷移金属触媒反応場を精密に制御することで、切断困難なヘテロ芳香環の炭素-ヘテロ元素結合の切断を伴うホウ素挿入反応を当初の計画通り開発できた。その研究途上において、さらに新しい芳香環変換手法を開発することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる触媒活性の向上を目指し、前年度に引き続き新規遷移金属錯体触媒ライブラリの拡大を図る。錯体触媒の金属中心の電子密度を高め、酸化的付加ならびにボリル化の反応活性を増強するため、より一層電子供与性の高いNHC配位子を創製する。例えば、塩基性条件下電子豊富になるフェノール性水酸基を有するNHC配位子を設計・合成し、ニッケル錯体触媒とする。これを用いて、各種ホウ素挿入反応に対する触媒活性を検討する。 加えて、オリゴアザボリンやアザボリン含有アセン/フェナセンの合成を、特殊ヘテロ芳香環へのホウ素挿入により達成したい。
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