研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01022
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鳶巣 守 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60403143)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 均一系触媒 / 不活性結合切断 / N-ヘテロ環カルベン |
研究実績の概要 |
本研究では、金属触媒を用いる種々の不活性結合の変換反応におけるNHC配位子の効果を検討した。その結果、TEPや%Vburといった指標からだけでは説明できない特異な配位子構造の効果が観測された。 例えば、ニッケル触媒による環状ビニルエーテルの炭素-酸素結合切断を経る開環アリール化反応が有機ホウ素求核剤により進行することを明らかにした。この種の反応にはこれまでGrignard反応剤を用いる必要があった。配位子としてはシクロヘキシル基を側鎖に持つICyが特異的に効果があった。 さらに、ニッケル触媒によるアリールカルバメートを求電子剤とする鈴木宮浦型のクロスカップリングでは、独自の2-adamantyl基を持つNHC配位子を用いることで、従来系では適用できなかったボロン酸エステルを含む多様なアリールホウ素求核剤とのクロスカップリングが可能になることを明らかにした。一方、不活性フェノール誘導体のC-O結合活性化にはもっぱらニッケルが用いられてきた。系中調製したロジウムにIMesMe配位子が2つ配位した錯体を触媒として用いることでアリールカルバメートとC-H結合とのクロスカップリングが進行した。この組み合わせのクロスカップリングはニッケル触媒では達成されておらず、ロジウム触媒特有の反応である。配位子として単純なIMesを用いた場合には収率が大きく低下する。加えて、NHC配位子を持つ白金触媒を用いることで、メシチレン誘導体の込み入った芳香族C-H結合のホウ素化が選択的に進行することを見出した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
系統的な配位子調査の結果、4つの新しい不活性結合切断のための触媒系を見出した。これらの反応では、いずれもN-ヘテロ環カルベン配位子が有効であり、特にイミダゾリウム系配位子の背面の置換基や側鎖構造の柔軟性など当初予想していた構造修飾の有効性が明らかとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、さらなる不活性結合の変換反応を推進するとともに、領域内の研究者の持つ特異的な反応場を利用する反応開発についても検討する。
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