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2016 年度 実績報告書

末端アルケンへの酸素求核剤の逆マルコフニコフ型付加反応の開発

公募研究

研究領域高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出
研究課題/領域番号 16H01028
研究機関奈良女子大学

研究代表者

浦 康之  奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40335196)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードパラジウム錯体 / アルケニルホスフィン / 末端アルケン / 逆マルコフニコフ型求核攻撃 / 窒素求核剤 / 酸素求核剤 / プロトノリシス / アルキル錯体
研究実績の概要

遷移金属錯体触媒を用いて,末端アルケンに対して酸素求核剤や窒素求核剤を逆マルコフニコフ選択的に(末端炭素側に官能基が結合するように)付加させることができれば,直鎖アルコールやエーテル,アミンおよびその誘導体等の工業的・合成化学的に有用な合成法となり得る。
本年度は,末端アルケンへの求核剤の逆マルコフニコフ型付加反応開発に向けた段階的検討を行った。その付加反応の可能な反応機構の一つとして,遷移金属に配位した末端アルケンに対する求核剤の逆マルコフニコフ型求核攻撃およびそれに続くPd-C(sp3)結合のプロトノリシスを経る機構が考えられ,この機構を量論反応として実現させるべく,アルケニルホスフィンが配位した中性のパラジウム錯体PdCl2(Ph2PCH2CH2CH=CH2)およびCl-を引き抜いたカチオン錯体に対する酸素求核剤および窒素求核剤の反応性を調べた。
重アセトニトリル溶媒中,メタノールなどのアルコールを求核剤として用いた場合には,中性・カチオン性のいずれのアルケニルホスフィン錯体に対しても反応しなかったが,より求核性の高い窒素求核剤であるピリジンおよびその誘導体を用いた場合には,カチオン性のアルケニルホスフィン錯体の配位アルケンに対する求核攻撃が逆マルコフニコフ型で進行してアルキル錯体を与えることを見出した。生成したアルキル錯体とHCl, TfOH, AcOH, PhOHなど種々のブレンステッド酸との反応を試みたが,多くの場合においてアルケン配位錯体に戻り,Pd-C(sp3)結合のプロトノリシスは進まなかった。
今後は配位子または求核剤上にプロトンを授受可能な官能基を導入してこのプロトノリシスを迅速に進行させ,量論的な逆マルコフニコフ型付加反応を達成した後に触媒的付加反応の実現に向けて検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

アルケニルホスフィンが配位したパラジウム錯体を用いた量論的な逆マルコフニコフ型付加反応については,窒素求核剤を用いた場合に配位アルケンに対する逆マルコフニコフ型求核攻撃が進行することを見出した。これに対し,その次の鍵段階であるアルキル中間体のPd-C(sp3)結合のプロトノリシスについては種々のブレンステッド酸を用いて検討したものの進んでおらず,この段階をいかに迅速に進行させるかが現在の課題の一つである。また,窒素求核剤よりも求核性の低いアルコールなどの酸素求核剤を用いた反応では,配位アルケンに対する求核攻撃がうまく進行しておらず,まずはパラジウム上の電子密度を下げるなどしてこの求核攻撃を進行させる必要がある。
一方,逆マルコフニコフ型付加反応における鍵段階であるPd-C(sp3)結合のプロトノリシスを検討する過程において,モデルとして用いたベンジルパラジウム錯体が,HCl, HBr, AcOHなどのブレンステッド酸存在下,酸素と反応してベンジル配位子由来の酸素化生成物であるベンジルヒドロペルオキシドを選択的に与えることを見出した。この反応は酸素を用いた炭化水素の触媒的かつ選択的な酸素化反応に繋がることから興味深く,例えばアルカンからの直鎖アルコール合成など,工業的に有用な反応となり得る。今後は反応機構の解明や,触媒反応に向けた検討を行う。

今後の研究の推進方策

窒素求核剤を用いた量論的な逆マルコフニコフ型付加反応については,鍵段階であるアルキル中間体のPd-C(sp3)結合のプロトノリシスを円滑に進行させるべく,配位子または窒素求核剤上にプロトンを授受可能な官能基を導入して検討する。酸素求核剤を用いての量論反応については,パラジウム上の電子密度を低下させて配位アルケンに対する求核攻撃を進行させる必要がある。アルケニルホスフィンに代えてアルケニルアミンやチオエーテルなどの相対的に電子供与性の低い配向基を持ったアルケンを用いたり,その他の配位子の電子的要因のチューニングによって逆マルコフニコフ型求核攻撃を進ませることとする。その後は窒素求核剤を用いた量論反応の場合と同様の方法により,アルキル中間体のPd-C(sp3)結合のプロトノリシスについて検討する。上述の量論的な逆マルコフニコフ型付加反応の達成後は,それらの知見を基に,触媒的な逆マルコフニコフ型付加反応の実現に向けて検討する。
一方,ブレンステッド酸存在下でのベンジルパラジウム錯体と酸素との反応については,今後は同反応がさらに迅速に進行するよう反応条件を検討しつつ,酸素化の詳細な反応機構の解明,メチルパラジウム錯体を用いての検討,および,これら量論反応において得られた知見を基に触媒的な炭化水素の酸素化反応の開発を行う。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Palladium-catalyzed Aerobic Synthesis of Terminal Acetals from Vinylarenes Assisted by pi-Acceptor Ligands2017

    • 著者名/発表者名
      Matsumura, Satoko; Sato, Ruriko; Nakaoka, Sonoe; Yokotani, Wakana; Murakami, Yuka; Kataoka, Yasutaka; Ura, Yasuyuki*
    • 雑誌名

      ChemCatChem

      巻: 9 ページ: 751-757

    • DOI

      10.1002/cctc.201601517

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Oxygenation of a Benzyl Ligand in SNS-Palladium Complexes with O2: Acceleration by Anions or Bronsted Acids2016

    • 著者名/発表者名
      Shimokawa, Reina; Kawada, Yumi; Hayashi, Miki; Kataoka, Yasutaka; Ura, Yasuyuki*
    • 雑誌名

      Dalton Transactions

      巻: 45 ページ: 16112-16116

    • DOI

      10.1039/C6DT02948E

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] アルケニルホスフィンパラジウム錯体の合成と酸素求核剤に対する反応性2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤瑠吏子; 片岡靖隆; 浦 康之
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-19
  • [学会発表] SNS-Pd錯体上のベンジル配位子の酸素化における中間体の観測2017

    • 著者名/発表者名
      林 美希; 片岡靖隆; 浦 康之
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-19
  • [学会発表] パラジウム錯体を用いた炭化水素類の末端選択的な酸素官能基化2017

    • 著者名/発表者名
      浦 康之
    • 学会等名
      新学術領域研究「精密制御反応場」第2回公開シンポジウム
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2017-01-25 – 2017-01-26
  • [学会発表] パラジウム触媒による酸素雰囲気下でのビニルアレーンからの末端アセタール合成反応2016

    • 著者名/発表者名
      松村聡子; 佐藤瑠吏子; 中岡園江; 横谷和香奈; 村上祐香; 片岡靖隆; 浦 康之
    • 学会等名
      第6回CSJ化学フェスタ2016
    • 発表場所
      タワーホール船堀、東京
    • 年月日
      2016-11-14 – 2016-11-16
  • [学会発表] SNS-パラジウム錯体上のベンジル配位子の酸素化反応:アニオンまたは酸による加速2016

    • 著者名/発表者名
      下川礼奈; 林 美希; 河田有未; 片岡靖隆; 浦 康之
    • 学会等名
      第6回CSJ化学フェスタ2016
    • 発表場所
      タワーホール船堀、東京
    • 年月日
      2016-11-14 – 2016-11-16
  • [学会発表] Oxygenation of a Benzyl Ligand in SNS-Palladium Complexes2016

    • 著者名/発表者名
      URA, Yasuyuki
    • 学会等名
      1st Symposium for Young Chemists on Precisely Designed Catalysts
    • 発表場所
      Minoo Sanso, Osaka
    • 年月日
      2016-11-11 – 2016-11-12
  • [学会発表] 末端酸化剤として分子状酸素を用いたパラジウム触媒によるビニルアレーンからの末端アセタールの合成2016

    • 著者名/発表者名
      松村聡子; 佐藤瑠吏子; 中岡園江; 横谷和香奈; 村上祐香; 片岡靖隆; 浦 康之
    • 学会等名
      第63回有機金属化学討論会
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      2016-09-14 – 2016-09-16
  • [学会発表] SNS三座配位子を有するベンジルパラジウム(II)錯体と分子状酸素との反応における種々のアニオン源および酸の添加効果2016

    • 著者名/発表者名
      下川礼奈; 林 美希; 河田有未; 片岡靖隆; 浦 康之
    • 学会等名
      錯体化学会第66回討論会
    • 発表場所
      福岡大学
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-12
  • [学会発表] Maleimides-Assisted Anti-Markovnikov Wacker-Type Oxidation of Vinylarenes Using Molecular Oxygen as a Terminal Oxidant2016

    • 著者名/発表者名
      NAKAOKA, Sonoe; MURAKAMI, Yuka; KATAOKA, Yasutaka; URA, Yasuyuki
    • 学会等名
      20th International Symposium on Homogeneous Catalysis (ISHC20)
    • 発表場所
      Kyoto Terrsa, Kyoto
    • 年月日
      2016-07-10 – 2016-07-15
    • 国際学会
  • [備考] 奈良女子大学 片岡-浦研究室ウェブサイト 研究概要-浦

    • URL

      http://www.chem.nara-wu.ac.jp/~kataoka/concept1.html

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公開日: 2018-01-16  

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