研究実績の概要 |
本研究課題では、エポキシドと二酸化炭素から環状炭酸エステルを合成する反応やエポキシドの速度論的光学分割反応に適した触媒を開発する。まず、これまで開発してきた二官能性触媒のさらなる触媒活性の向上を目指して、メソ位ベンゼン環のパラ位の置換基効果を調査した。パラ位に電子求引性基(ブロモ基、シアノ基)を有する二官能性ポルフィリン亜鉛錯体を合成した。触媒活性は無置換体 < ブロモ体 < シアノ体となり、電子求引性基の導入により触媒活性が向上した。特に、シアノ体の触媒活性が最も高く、TOF = 42,000 h-1を示した。また、数ppmの触媒を用いて長時間反応に附すと、TON = 260,000を示した。一方、ビナフチル基で架橋したキラル亜鉛ポルフィリンを数段階で合成した。NMR、UV/vis、CDスペクトルから、架橋によってポルフィリン環が歪み、メチレン鎖長が短くなるにつれて歪みが大きくなっていることが示唆された。X線結晶構造解析の結果、平面からの歪みを表すmean plane deviationは0.119オングストロームであり、架橋によりポルフィリン環が確かに歪んでいることを確認した。
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