ゲルを担体とする触媒の多孔固定化担体の開発を行った。オルガノゲル、ヒドロゲルの双方について開発を行い、有機反応への適用を図った。 1)Pd触媒固定化ヒドロゲルのフロープロセスに関する検討:ポリN-イソプロピルアクリルアミドをベースとした多孔高分子ゲルを用いた固定化触媒、流通リアクターの開発を行った。アミノ基を固定化することで、イオン吸着法でPdを固定化した。ゲルの架橋密度を種々変化させた。このゲルに対して水溶液を流通させたところ、低い圧力損失で安定的なフローを確保することができた。フェニルボロン酸とブロモ安息香酸の鈴木カップリング反応を行ったところ、フロープロセス、高い収率で生成物を得ることができた。Pdはリーチングが見られず、粒径の増大も見られなかった。 2)Pd固定化オルガノゲルの開発:ポリスチレンをベースとする網目状高分子は有機溶媒に膨潤してゲル性を呈する。トリフェニルホスフィンのスチレン誘導体を各種合成し、これを含むスチレンゲルを調製し、鈴木カップリング反応用の固定化触媒としての利用を検討した。ホスフィンリガンドを持つ高分子にPdを固定化させて、鈴木カップリング反応を行ったところ触媒の活性が向上し、芳香族塩素化化合物についても鈴木カップリング反応に用いることができた。また、種々の基質のビフェニル生成反応を触媒することがわかった。 3)有機分子触媒固定化ヒドロゲルの開発:有機分子触媒であるL-プロリンは不斉触媒として機能することが知られている。そこで、プロリンのアクリレート誘導体を用いて、アクリルアミドゲルにこれを固定化した多孔体を調製して、アルドール反応の触媒として用いた。多孔ゲルの調製はアルコール存在下で行い、調製条件によって異なる多孔度を呈した。L-プロリン固定化多孔ゲルはアルドール反応を触媒し、L-プロリン担体に近い不斉触媒能を持つことが明らかになった。
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