研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01043
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
熊谷 直哉 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 主席研究員 (40431887)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不斉触媒 / 不斉反応 / C-C結合 / 原子効率 |
研究実績の概要 |
アルキルニトリルを求核種前駆体,C=O/C=N化合物を求電子剤とする反応を設定し,ソフトLewis酸/ブレンステッド塩基協奏機能型触媒によりアルキルニトリルを特異的に認識・活性化・脱プロトン化させ,活性求核種であるα-シアノカルバニオンを発生させる戦略を採用した。ニトリル部位がソフトLewis酸に特異的に配位活性化することでニトリルα位水素の酸性度が上昇し,温和なブレンステッド塩基の共存化により活性求核種であるα-シアノカルバニオンの触媒的な系中発生が可能と期待される。求電子剤として,まずはC=O系化合物よりも反応性が高いC=N(EDG)系求電子剤を用い,α-シアノカルバニオンの発生を可能にする触媒系の探索に注力した。既に開発したCu(I)/(R,Rp)-Taniaphos/Barton’s baseを協奏機能型触媒とするアセトニトリルのアルジミンへのダイレクト型不斉付加反応から外挿し,合成化学的に有用なキラルα,α-2置換アミノ酸誘導体を与えるケチミン型求電子剤に対する反応の開拓を同触媒系を用いて開始したが,反応の進行は見られなかった。斎藤らは[Rh(cod)(OMe)]2/PCy3触媒がアルキルニトリルのアルデヒドに対する直截的付加反応に有効であることを報告しており,9族金属アルコキシドとキラルNHCからなる触媒系を精査した結果,[Ir(cod)(OMe)]2/triazolium salt/Barton塩基からなる触媒系により,収率・エナンチオ選択性に改善の余地はあるものの,望みのα,α-2置換アミノ酸誘導体が得られる事を見出した。本反応はN-チオフォスフィノイルケチミン特異的に進行し,対応する酸素誘導体であるN-フォスフィノイルケチミンでは生成物は確認されていない。生成物中のN-チオフォスフィノイル基は過酸化水素/塩酸の連続処理により選択的に除去可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アセトニトリルからの触媒的なカルバニオン発生,続くエナンチオ選択的な反応という困難な2段階プロセスを,立体選択性の発現が困難なケチミンに対して達成した。生成物はα,α-2置換アミノ酸誘導体であり合成化学的利用価値も高い。
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今後の研究の推進方策 |
触媒回転効率・立体選択性に改善の余地は残すものの,C=N型求電子剤へのダイレクト型不斉付加反応がケチミンにおいても進行する事を見出した。今後,より汎用性の高い反応とするべく,幅広い基質適用範囲が見込まれるC=O型求電子剤を用いる反応に注力する。配位子合成・触媒活性評価を加速すべく1,2,4型から1,2,3型トリアゾリウムへと転換し,未だ低立体選択性に苦慮するアルキルニトリルの直截付加反応を用いる反応を完成へと導く。
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