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2016 年度 実績報告書

ファインケミカル合成を指向した酸素酸化用触媒の開発

公募研究

研究領域高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出
研究課題/領域番号 16H01044
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

田中 真司  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 触媒化学融合研究センター, 研究員 (20738380)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードファインケミカル / エポキシド / グリシジル化合物 / グリシドール / アンモニウム塩 / 触媒
研究実績の概要

本研究課題では、化学産業において重要なファインケミカルをクリーンかつ効率的に合成するための触媒開発を行っている。今年度は、特に電子材料用樹脂の原料として有用なグリシジル化合物に着目し、それらのクリーンな合成法の開発を目指して研究を進めた。
グリシジル化合物は通常、エピクロロヒドリンを原料として合成されるが、塩素含有化合物の使用規制強化の背景などから、これに代わる原料の利用が求められる。我々は、グリシドールに着目し、これを温和な条件で活性化してグリシジル化合物へ変換するための触媒開発を行った。
種々の触媒を検討した結果、第四級アルキルアンモニウム塩が温和な条件でグリシドールを活性化することを見出し、90%以上の収率でグリシジルエステルを対応するメチルエステルから得ることに成功した。さらに、エポキシ樹脂の原料として有用な多グリシジル化合物の合成に関しても適用可能であることを確認した。反応メカニズムに関する知見を得るため、第四級アルキルアンモニウム塩とグリシドールの溶液中での挙動をNMRにより観測した結果、これらの分子は溶液中で会合体を形成していることを見出した。また、会合体からの部分的なエポキシ開環反応により生じるアニオン種が反応を進行させる鍵となっていると考えられる。
また、酸素を酸化剤とする触媒反応の開発にも取り組んだ。単純な銅塩を用い、入手しやすいピコリン類から直接ホルミルピリジン類の選択的に合成する方法を開発した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時に提案していた酸素酸化反応を目指した触媒とは異なるが、ターゲットとしていた化合物を異なるアプローチから合成する触媒の開発に成功した。すなわち、グリシドールを用いて、様々なグリシジル化合物を合成するための基本的な触媒デザインを見出すことが出来た。また、触媒反応の開発に限らず、反応メカニズムに関して一定の知見を得ることが出来た点も評価に値する。
また、酸素による酸化反応のための触媒候補として、第一遷移周期の単純な金属塩のポテンシャルを見出すことが出来た。

今後の研究の推進方策

グリシドールを活性化する触媒の開発においては、これまで用いてきた分子状の触媒に限ることなく、回収可能でありより実用的な固相担持型触媒への展開を計画している。固相担体としては有機ポリマーやメソポーラスシリカ等の多孔性材料を視野に入れている。また、これまで詳細な検討が出来ていなかったカウンターアニオンの効果に関しても集中的に検討する予定である。特に、固相担持型触媒の活用に際しては、溶液状態よりもメカニズム等の分析が困難である課題がある。そのため、我々は固体表面での触媒反応過程をモニターするため、動的核分極法を用いる固体核磁気共鳴の活用を計画している。特に、これまでに知られていなかった、固体表面に担持されたアルキルアンモニウム塩の挙動について基礎的な構造を明らかにし、さらに触媒反応条件におけるメカニズムの解明を目指す。
加えて、オレフィンの酸化反応によるエポキシ化合物合成に関しても研究を推進する。特に、安価な金属触媒と適切な配位子の組み合わせにより酸素を温和な条件で活性化し、二つの酸素の両方を有機物へと移動させることの出来る触媒を設計、開発する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (3件)

  • [雑誌論文] Concerted Catalysis in Tight Spaces: Palladium-Catalyzed Allylation Reactions Accelerated by Accumulated Active Sites in Mesoporous Silica2017

    • 著者名/発表者名
      本倉 健、池田 まりか、南保 雅之、田 旺帝、中島 清隆、田中 真司
    • 雑誌名

      ChemCatChem

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1002/cctc.201700439

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Copper-Catalyzed Selective Oxygenation of Methyl and Benzyl Substituents in Pyridine with O22017

    • 著者名/発表者名
      阿部司、田中真司、小川敦子、田村正則、佐藤一彦、伊東忍
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 46 ページ: 348-350

    • DOI

      10.1246/cl.161074

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 環境共生化学によるものづくり 世界をリードする触媒技術が低環境負荷社会を実現する2016

    • 著者名/発表者名
      田中真司、佐藤一彦
    • 雑誌名

      工業材料

      巻: 64 ページ: 45-48

  • [学会発表] Highly Selective Activation of Glycidol and Catalytic Transesterification Using Quaternary Ammonium Salts2017

    • 著者名/発表者名
      田中真司、今喜裕、田村正則、佐藤一彦
    • 学会等名
      第96日本化学会春季年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-16
  • [学会発表] 四級アンモニウム塩触媒を用いたエステル交換反応によるグリシジルエステルの合成2016

    • 著者名/発表者名
      田中 真司、今 喜裕、田村 正則、佐藤 一彦
    • 学会等名
      第118回触媒討論会
    • 発表場所
      盛岡
    • 年月日
      2016-09-21 – 2016-09-21
  • [学会発表] Iron-Catalyzed Oxidation of Alcohols and Aldehydes by Environmentally Benign Oxidants2016

    • 著者名/発表者名
      田中 真司、今 喜裕、田村 正則、佐藤 一彦
    • 学会等名
      27th International Conference on Organometallic Chemistry
    • 発表場所
      メルボルン
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-21
    • 国際学会
  • [産業財産権] 芳香族ニトリル化合物の合成法2017

    • 発明者名
      田中真司、田村正則、佐藤一彦、真島和志、劒隼人、上田耀平
    • 権利者名
      産業技術総合研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-034024
    • 出願年月日
      2017-02-24
  • [産業財産権] アリル化反応用触媒2017

    • 発明者名
      田中真司、田村正則、佐藤一彦、本倉健、池田まりか
    • 権利者名
      産業技術総合研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-039618
    • 出願年月日
      2017-03-02
  • [産業財産権] ホルミルピリジン類の製造方法2016

    • 発明者名
      田中真司、田村正則、佐藤一彦、伊東忍、阿部司
    • 権利者名
      産業技術総合研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2016-116314
    • 出願年月日
      2016-06-10

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公開日: 2018-01-16  

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